rocorinne bookworm

この映画観たよ。

4月に読んだ本まとめ

先々月のことを、すみません、今頃。
4月の一番は、この本でした。

 

献灯使

献灯使

 

 表題作の中編は予備知識なしで読み始めたので、この物語の設定が徐々にわかっていく過程が衝撃的で、とてもよかった!(後で帯を見て、帯を先に読んでいたらこの楽しさは味わえなかったと思う。)3.11から数十年後の東京ディストピア。終始薄い筋肉のようなユーモアに包まれていて読み進められるが、若い世代が育たない絶望を臨む世界だ。短編3本は、避難所、海外からの視点、原発難民を描き、それぞれ面白い設定ではあるものの主張が勝ちすぎているきらいも。でも、作家の主張は大事ですよね。

戯曲1編は、動物たちが擬人化して、絶滅した人間を評価するという設定って変…と思って読んでいたら、単なる擬人化からだんだん本当に人間みたいになっていき、おもしろかった。

読書会の課題本で読んだのですが、みんなして彼女の技量に圧倒された感じでした。

 

 

Book Covers in Wadaland 和田誠 装丁集

Book Covers in Wadaland 和田誠 装丁集

 

 和田誠さんの装丁の本を見ると手に取りたくなる。特に文字にくらっとする。星新一が好きで、その雰囲気を感じてしまうからかな?と思うのだけど。1960年代、知り合いの作家、と言っても星新一谷川俊太郎という豪華な顔ぶれだが、彼らに文を提供してもらい私家版の絵本を作ったのが、装丁を手がけるようになったきっかけらしい。丸谷才一阿川佐和子らの装丁を多く手がけ、井上ひさし三谷幸喜らも雰囲気がぴったりだ。意外なのは、谷崎潤一郎や、村上春樹の翻訳書も手がけているところ。堪能しました。 

 

Ready or Not (All-American Girl)

Ready or Not (All-American Girl)

 

 映画化された「プリンセス・ダイアリー」が有名なメグ・キャボットだが、この人の作品では「恋するアメリカンガール」が一番おもしろかった。その翻訳されていない続編をやっと読みました。女子高校生の口語体で書かれていて、彼とセックスする準備ができてるかどうか?という話なのだが、広範囲な社会問題も取り込み、いろんな意味でとても啓蒙的な内容です(笑)。主人公の憧れはグウェン・ステファニーだが、登場するアイドルの名前がだいたいわかる辺り、私のミーハーレベルも堂に入ってます。

 

 

はじまりのはじまりのはじまりのおわり 小さいカタツムリともっと小さいアリの冒険 (福音館文庫 物語)

はじまりのはじまりのはじまりのおわり 小さいカタツムリともっと小さいアリの冒険 (福音館文庫 物語)

 

 アヴィを続けて読み4冊目。14世紀、19世紀に題材を求めて書きこんだ『クリスピン』『シャーロット・ドイルの告白』に比べて、小さなカタツムリとアリのほのぼのした物語だ。あまりおもしろみはなかったが、挿絵はとてもかわいい。

 

 

スナーク狩り (挿絵=ホリデイ)

スナーク狩り (挿絵=ホリデイ)

 

穂村・ヤンソン版のスナーク狩りを読んだので、こちらも読んでみたが、とても知的好奇心をくすぐられる作りだ。ルイス・キャロルと相談しながら描いたヘンリー・ホリデイの絵も細密でおもしろく、訳者高橋康也さんの訳と注に加え、河合祥一郎さんの詳しい注と解説が載っている。これを読むと、たくさんの賢い、いい大人がこの謎々に取り組んできた歴史がわかるというものだ。


 

 

シャーロット・ドイルの告白

シャーロット・ドイルの告白

 

 【1991 Newbery Honor Book】『クリスピン』は、主人公の少年が貧乏と無知という粘土の殻を破って出てくる話だが、一方この本の主人公の少女は、上流社会という真綿の箱から脱出する。1832年イギリスで教育を受け、アメリカに帰る13歳の少女という設定で、大西洋を航海する小さな帆船が舞台となっていておもしろい。船長と彼女のお父さんが似ているという、彼女の観察は正しかった!

 

 

 

星条旗よ永遠なれ (くもんの海外児童文学)

星条旗よ永遠なれ (くもんの海外児童文学)

 

 【1992 Newbery Honor Book】『クリスピン』のアヴィ作品を続けて読む。こちらはほぼ現代のアメリカ、ニューハンプシャー州。高校が舞台だ。陸上チームに入ればスター選手間違いなしの高校生フィリップ。頭はいいのに勉強しないので、数学はAだけど、英語(国語)はDだ。その英語を教えているのは、勤続21年、ベテランの英語教師ナーウィン先生。誠実な人柄で生徒からも好かれている。この二人の間の些細なトラブルが、周囲の大人たちによって大問題に発展していく。

 

 

クリスピン

クリスピン

 

 【2003 Newbery Medal Winner】中世のイギリスを舞台にした、少年の成長物語だ。中盤から夢中になって、ドキドキしながら読む。絶体絶命な状況から、誰が助けてくれるの?どんな状況が降臨するの?と思って読んでいたら、少年本人が道を切り開いた!貴族の身分を捨てて、自由を選ぶすがすがしい終わり方。でも、これで本当に大丈夫?という疑問が残る。3部作になっているものの、残り2編は未訳だし、ニューベリー賞候補にもなってない~。

 

 

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (下) (リヴィエラ)

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (下) (リヴィエラ)

 

 映画版で、アナ役のダコタ・ジョンソンはかわいいシット・コムを見て知っていたので、アナはダコタでぴったりだったと思います。「私の大学の成績表を見せてやりたいわ、私だってバカじゃないんだから…」みたいなことを言うバカな女の子の役なので(笑)。ダコタはアカデミー賞のレッド・カーペットに実母メラニー・グリフィスと登場し、メラニーに映画は見ない、と言われてプチ切れしてました。ロードショーをやっているうちにと急いで読みましたが、私も映画館で見るのは恥ずかしいかなー。

 

 

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (上) (RiViERA)

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (上) (RiViERA)

 

 この本を読んだのは、映画の方で配役スキャンダルがあり、ファンが署名運動までしてグレイの候補にあげたマット・ボマーのファンでもあるのですが、相手女優候補が、「ギルモア・ガールズ」で7年間成長を見守ったかわいいローリー・ギルモア役を演じたアレクシス・ブレデルだったからです。本の感想でなくてすみません、下巻に続きます…。

 

 

アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を

 

 チャーリーの「経過報告」によって語られる一部始終が、彼の変化を見事に語って読ませてくれる。穏やかで人のいいチャーリーが、知能を得るにつれて思い出す記憶が悲惨なものが多いので、辛い。かわいそうだ。知能を失っていく過程で多重人格風になるのもうまい作りだ。SFと思って読めばそういう感想になる。近未来にあり得ること、と考えると障害者の描き方には突っ込みどころ満載だ。ドラマが始まるので再読したけど、ドラマにも突っ込んでしまうだろうな…。でも山ピーだしやっぱり見たいかな。

 

 

斜陽

斜陽

 

 『斜陽』は読んでおもしろかった記憶があり、再読。スープの印象的な場面から始まり、没落していく貴族の家の、真に貴族らしく愛らしい母、アヘン中毒で問題児の弟、その二人を支える姉娘が主人公だ。母の死後、姉・弟は正反対の行動を起こす。・・・姉娘のモデルが太宰の愛人、太田静子で彼女の日記や手紙が作品の元になっているという。太宰はこの小説を書いた翌年に自殺して今度こそ死んでしまうが、静子が生んだ娘がその後作家になっていたり、作品の主人公かず子の将来を予見しているようで、どこまでも物語になる人ね、と思う。

 

 

まばたき (えほんのぼうけん67)

まばたき (えほんのぼうけん67)

 

 みなさんのレビューで気になっていた絵本を、やっと読みました。最後のページはぎゃっと声を上げそうになりました。まばたき…する間ほどの短い刹那をあらわす3枚の絵。余談です。先日旅行中に二つのおさげに編んでホテルの朝食に出て、しばらくすると娘がかわいいね、と言うので、いや誰も突っ込まないからさ〜、これで出かけていい?と聞くと、ダメ。と言われました。「ぎゃっ!」