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この映画観たよ。

5月に読んだ本のまとめ 夏目漱石『草枕』ほか

今月は、振り返ってみるとなんだかとても充実した本が読めていたような気がします。

 

今月の一冊は、一番ていねいに読んだ、夏目漱石の『草枕』にします。 

草枕 (新潮文庫)

草枕 (新潮文庫)

 

青年画家が、山奥の旅館である心境を得て、それを表したいと考えている。表現の方法は、絵画か、音楽か。詩が合うだろうと漢詩の句を編み出す。彼の芸術論は世俗を離れ、東西の教養に基づき高尚なのだが、その一方、宿には出戻りの娘、那美がいる。那美にまつわる話、結婚・離婚の経緯、やはり美貌で自殺した娘が祖先にいること、気狂と言われる言動のうわさ。そして、実際に会う那美はやはり謎の女である。美貌、思わせぶりなそぶり、口が達つこと、振袖、湯殿での裸身、白刃きらめく短刀。男はそんな那美を絵画のテーマとして客観視している。

私の友人が、最後の一瞬の場面が「画竜点睛」のようだと言いました。その通りだと思います。

読了日:5月14日 著者:夏目漱石

 

 

2016年5月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:3311ページ
ナイス数:1229ナイス  

 

 

『それから』も読めました!もう、代助ったら……。  

それから (岩波文庫)

それから (岩波文庫)

 

「それから」の代助は、漱石の主人公の中ではたぶん一番の男前。そして金持ちの次男坊でニート!……優雅な暮らしぶりだが、高い教育を受けた頭で考えれば考えるほど日本に、社会に、父や兄の属する経済界に幻滅を感じるのだろうが、自分では何をする気もなく、父の富に頼って生きていることを省みることもない。やはり、ニートというのはちょっと死んでいるような状態だなと思います。そして三千代との再会。三千代「仕様がない。覚悟を極めましょう」顫える代助。こんな風に生き返った代助は、どのように生きていくのか。ラブストーリーですね! 朝日の連載で読みました。岩波が底本とあるのでこちらで登録です。

三四郎』のそれからを書いた、というのは、朝日新聞社の文芸欄の責任者としての漱石の宣伝文句かと思ってしまいます。三四郎と代助の身分は違いすぎるし、代助と三千代の関係も、三四郎と美禰子のものとは全く違いますね。

読了日:5月26日 著者:夏目漱石 

 

朝日新聞の連載で毎朝『吾輩は猫である』も読んでいるし、その前の『門』も、新聞を取ってあって(汗)読み始めたので、毎日ちょっとずつ漱石先生と向かい合う時間があるって、いいものですね。

 

 

その他に、読書メーターのイベントで、瀬田貞二の関連作品を読みました。

著書『幼い子の文学』は、教科書にしたいくらい、とてもよかったです。 

幼い子の文学 (中公新書 (563))

幼い子の文学 (中公新書 (563))

 

幼い子の文学 (中公新書 (563))感想

これは素晴らしい本でした。なぞなぞやわらべ歌など口伝のもののリズムの良さ、創作の、子どものための詩や物語など、日本のものも引き合いに出しながら、主に英国の作品を紹介してくださり、よい詩とは、よい文学とはということを明らかにしてくれます。何度も読んで教科書にしたいくらいです。児童図書館員対象の講座で話された内容を、斉藤敦夫さんがまとめた贅沢な一冊。【瀬田貞二生誕100周年】イベントで読みました。
読了日:5月5日 著者:瀬田貞二

 

  

瀬田貞二さんの翻訳『ホビットの冒険』も読みました。 

ホビットの冒険 オリジナル版

ホビットの冒険 オリジナル版

 

瀬田貞二生誕100周年記念イベント】で読みました。この本は、トールキン画の表紙と挿絵、本文は横書きと凝った装丁。トールキンは直線と曲線を組み合わせたデザイン性の高い絵を描く人だと知りました。以前読んだときは、指輪物語に比べて登場人物が地味、と思ったのですが(笑)、今回はホビットのビルボとドワーフたちの活躍を楽しく読みました。「つらぬき丸」(Sting)とか、ゴクリ(Gollum)とか、瀬田貞二さんの訳はすっかりおなじみでしっくりきます。まさに「ゆきて帰りし物語」ですね。映画は観てないのですが、3部作ですからずいぶん膨らませてあって、登場人物も派手に作られているのでしょうね。【ガーディアンの1000冊、既読】

読了日:5月1日 著者:J.R.R.トールキン

 

もう一つ、読書メーターのイベントで、無謀なもの(*_*; に参加しています。

前半は主に自身の社交生活を始めた「私」の目に映る、ノルポワ侯爵、作家のベルゴット、芸術論が語られ、後半はスワンの娘ジルベルトに対する「私」の恋心が語られる。ジルベルトには会わずに妄想を募らせ、自滅的な破局を迎えるが、恋心とはかくに主観的なものか。しかし、失われた時を求めて思い出されるのは、ジルベルトを避けつつ歓心を買うために頻繁に訪れたスワン夫人・オデットの美しさであるらしい。オデットの美しさが、上着の袖口に至るまで繰り返し語られる。【ガーディアン1000冊のイベント、途上です】

読了日:5月29日 著者:プルースト

 

途中で挫折する本ナンバー1の『失われた時を求めて』をみんなで励ましあって一年で読もう、というイベントなのですが、トップランナーたちはすでにゴールインし、私は最後尾ちょっと手前であえいでいるところです。でも、一年の締め切りは延長してくださるそう(;´∀`)

岩波文庫版で全何冊あるかというと、実はまだ最後まで刊行されていないんですね。笑 まだ9巻目までです。完結している集英社版で全13巻です。

 

 

更にもう一つ、読書メーターのイベントで、ピーター・ラビットのシリーズを原文・翻訳の両方ずつ読んでいます。全24冊を7月の終わりまでに読む予定だったのですが、まだ6冊……(*_*; 翻訳だけでさら~っと読んでしまうのはちょっともったいないような気がして、原文と合わせてじっくり読んでいるのですが、もう少しペースを上げようと思います。  

The Tale of Benjamin Bunny (Peter Rabbit)

The Tale of Benjamin Bunny (Peter Rabbit)

 

 前書きに、ポターが、2冊目の「りすのナトキンのおはなし」と3冊目の「グロースターの仕たて屋」は、最初の「ピーター・ラビットのおはなし」に比べてちょっと難しかったかしら?次はもっとシンプルにした方がいいと思わない?と編集者に相談してできたのがこの「ベンジャミンバニーのおはなし」だ、ということが書いてありました。読んだのはWARNE社の110年記念版です。ベンジャミン・バニーのお父さん、すごい迫力です!【「ビアトリクス・ポター」生誕150周年】イベントで読みました。

読了日:5月5日 著者:BeatrixPotter

 

ベンジャミンバニーのおはなし (ピーターラビットの絵本 2)

ベンジャミンバニーのおはなし (ピーターラビットの絵本 2)

 

ベンジャミンが表紙でかぶっている、マクレガーさんの帽子、「tam o shanter」はなんて訳してあるのかな?と思ったら、「けいとのぼうし」でした。(TVドラマ「アウトランダー」の皆さんがかぶっているのも、ポンポンはないけどtam o shanterらしいです。)マクレガーさん、若いときは派手なのをかぶっていたのね。ピーターは続けて痛い目にあったけど、お母さんに怒られなくてよかったです。笑 【「ビアトリクス・ポター」生誕150周年】

読了日:5月6日 著者:ビアトリクス・ポター

 

The Tale of Two Bad Mice (Peter Rabbit)

The Tale of Two Bad Mice (Peter Rabbit)

 

お話に出てくるドールハウスの本当の持ち主の少女ウィニフレッドに本がささげられていますが、彼女は、ポターの婚約者の姪でした。そしてその婚約者は結婚前に亡くなってしまったそうです。そんな序文がついていました。

読了日:5月24日 著者:BeatrixPotter

 

2ひきのわるいねずみのおはなし (ピーターラビットの絵本 7)

2ひきのわるいねずみのおはなし (ピーターラビットの絵本 7)

 

ねずみの夫婦にぴったりの大きさのドールハウス。でも、きれいに盛り付けられた食事はにせものです。トム・サムは怒って壊してしまいますが、奥さんのハンカ・マンカは、ねずみのいえで使えるものをどんどん失敬します。さすがは主婦ですね。その後、こっそりお掃除に通っている辺り、ハンカ・マンカのお気に入りぶりがわかるというものです。

読了日:5月24日 著者:ビアトリクス・ポター

 

The Tale of Mrs. Tiggy-Winkle (Peter Rabbit)

The Tale of Mrs. Tiggy-Winkle (Peter Rabbit)

 

英語版の方には、Publisher's Noteが序文としてついていて、それを読むのが楽しみになりました。当時の出版事情がわかります。次はハリネズミの本を書くというポターに、編集者で後の婚約者になるウォーンは、ハリネズミで人気が出るかと懸念を示しましたが、ポターは(人間の)女の子の話だし大丈夫でしょうと答えました。が、二人の予想を超えて、女の子ルーシーよりも、ハリネズミのミセス・ティギー・ウィンクルの方が、長年の人気者になりました。

読了日:5月31日 著者:BeatrixPotter

 

ティギーおばさんのおはなし (ピーターラビットの絵本 16)

ティギーおばさんのおはなし (ピーターラビットの絵本 16)

 

ハンカチ3枚とエプロンを失くしたルーシーは、探し回るうち、ティギーおばさんのうちを見つけます。ティギーおばさんは洗濯屋で、ピーターやナトキンの服なんかも洗っています。ルーシーの失くしたものもみんな見つかり、エプロンはアイロンをかけてもらってフリルもひだもすっかりきれいになります。よく働くティギーおばさんの帽子やドレスからとげが出ているところがご愛敬。

読了日:5月31日 著者:ビアトリクス・ポター

 

もう一つ、「読んだど―――!」と自慢したいのが、ル・グインのSF名作です。 

こんな設定、こんな心理描写、こんな寒そうな惑星……。

闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))

闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))

 

ル・グィンはやっぱりすごい!宇宙連合への加盟を勧めるために、惑星ゲセンを訪れている使節ゲンリー・アイ(地球人)は、両性具有で高度な知能を持つ人類達と対峙する。驚きの生態を持つ彼らの世界を、特に哲学、倫理、心情などの面での特徴を詳しく描き込む。寒い寒い惑星。戦争という言葉がない世界。彼(彼女?)らと理解しあったり友情を結ぶことができるのか?【ガーディアンの1000冊イベント】73冊目/1000冊

読了日:5月26日 著者:アーシュラ・K・ル・グィン

 

 

 

他には、こんな本を読みました。

 

ぞうからかうぞ (ことばあそびの絵本)

ぞうからかうぞ (ことばあそびの絵本)

 

読み聞かせしてもらいました。動物を題にした、回文ばかり。それを絵とともに読むと、笑えて仕方がありません。「さぎ、すいかのかいすぎさ」にどんな絵がついていたでしょう?

読了日:5月3日 著者:石津ちひろ

 

 

文豪ナビ 夏目漱石 (新潮文庫)

文豪ナビ 夏目漱石 (新潮文庫)

 

読書会の課題が『草枕』になり、皆の頭の上に「難しい」「読めない」という字が浮かび(笑)、私もあんちょこを読もうと思いました。でも、本書P28「「非人情の文学」などと標榜される『草枕』には、現代の若者にも通じる切実なテーマが敷き詰められている。主人公は那美という風変わりな女性……」とあって、ええ~!?那美さんが主人公で「世間に負けるな、那美!」みたいな主題で、現代の若者にも通じるテーマになるってこと?高尚な芸術論をこねくり回す青年画家の立場は……?などと思いました。三浦しおんさんのエッセイがよかったです。

読了日:5月14日 

 

アルルおばさんのすきなこと

アルルおばさんのすきなこと

 

アルルおばさんのすきなことは、クッキーづくり。ねこのテッティ。そして重いものを持ち上げること!肩と背中を痛めたアルルおばさんが、テッティをまた抱けるようになるために、50グラムのたまごからリハビリです。

読了日:5月16日 著者:松本聰美

 

 

ともだちまねきねこ

ともだちまねきねこ

 

ぼくがもらった「まねきねこ」は、左手を上げていて人を招く力がある。ぼくが会いたいのは死んだおばあちゃんだ。「おばあちゃんをよんでください」―ぼくの願いに答えてやってきたものは……? とても楽しいお話です。松本聰美さんのお話にはよく食事が出てくる。そして「人が死ぬこと」も。食べることこそ生きる源である、そのことを書きたい、伝えたいと思っていらっしゃるそうです。

読了日:5月18日 著者:松本聰美

 

 

新聞は、あなたと世界をつなぐ窓

新聞は、あなたと世界をつなぐ窓

 

小学校高学年くらいの読者に向けて、新聞の役割や、どのように新聞が作られるかをやさしく教えてくれるものだが、大人でも勉強になります。「物の見方はさまざま」「情報選択の力」「主張のちがいを読み解く力」ときて、2014年7月1日「集団的自衛権の行使を認める」を伝える各紙の違いについて、問題の背景を憲法からていねいに説明し、毎日、朝日が反対の立場、読売、産経、日経が賛成の立場、参考に琉球新報も載せているところはお見事。さらにNIE(Newspaper in Education)の効果と方法も盛り込まれています。著者は毎日新聞の記者で、本の出版時は毎日小学生新聞編集次長。

読了日:5月20日 著者:木村葉子

 

 

?(疑問符)が!(感嘆符)に変わるとき―新聞記者、ワクワクする

?(疑問符)が!(感嘆符)に変わるとき―新聞記者、ワクワクする

 

先に読んだ木村洋子記者の本がとてもまじめな新聞を解説する物だったのに比べて、姉妹本の小国綾子記者の本は、彼女自身の新聞記者・ジャーナリストとしての半生を綴った物で、バイタリティーと才能の輝きが炸裂しているような生きざまが読める。「迷ったら、やったことのない方を選ぼうよ」という鉄則。新人時代、警察取材もスポーツ取材も人並みにできなくて、と言いながらこの苦手な2分野から学んだことはとても大きいという。その後も迷ったり悩んだりしながら、結婚・子育て・夫の海外転勤に伴う離職、復職。他の本も読んでみたい。

読了日:5月21日 著者:小国綾子

 

 

アメリカなう。

アメリカなう。

 

アメリカについて…知れば知るほど書けなくなるなら、何も知らない今がチャンスなのかも『疑問符が感嘆符に変わるとき』」、という著者のワシントンDC滞在記だ。元毎日新聞の記者で、行動力抜群の人だから内容は多岐にわたりおもしろい。おいしい蕎麦を食べたくて蕎麦打ちまでしてしまう「内向き」さにはちょっとびっくり。NYに比べて日本食の調達など不便と言うが、私が夫の転勤で暮らした米国南部の都市は、DCよりさらに不便で日本人の少ない所だった。自分の時はこうだったな~と比べながらちょっと懐かしく読みました。

読了日:5月31日 著者:小国綾子

 


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