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この映画観たよ。

神奈川近代文学館「夏目漱石展」と『草枕』 後編

読書会で、神奈川近代文学館まで行ってきました。

特別展「100年目に出会う 夏目漱石」を観に行ったのです。

 

 

「100年目に出会う」……百年はもう来ていたんですね。

百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから。

夢十夜、第一夜より) 

 

 

東京都区部に住む私には、横浜を過ぎて、みなとみらい線元町・中華街駅下車の神奈川近代文学館まで行くのは小旅行みたいなお出かけですが、港の見える丘公園内のこの文学館は、緑に囲まれとても気持ちのいいところです。企画展もおもしろいものが多くて、出かけるのが楽しみになります。 そしてランチは中華街のお散歩コース(*‘ω‘ *)。

 

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神奈川近代文学館/(公財)神奈川文学振興会

 

港の見える丘公園は、ちょうどバラが見事に咲いていました!ちょっと遅刻気味だったもので、写真が取れませんでした(泣)。

  

特別展「100年目に出会う 夏目漱石」 | 神奈川近代文学館

 

お天気のいい土曜日で、人出もまずまず。すごく混んでいるわけではないのですが、展示物に書簡や原稿など読み物が多いので、なかなか時間がかかりました。

 

漱石の写真もいっぱいあって、初めて見る写真からも、彼の真面目そうな様子がうかがわれました。病気の跡があってあばた面と言われますが、漱石先生はなかなかハンサムですね。

 

正岡子規との交流について

 

以前『ノボさん』を読んで、夏目漱石正岡子規が親友であった様子を知りました。この本はとてもおもしろく、特に正岡子規が、俳句や和歌を文学の表舞台に再登場させた役割を知り、病身ながら大業績を残したことを知りました。

ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石

ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石

 

 

さて、今回の漱石の写真の中で「帝国大学時代、子規に送った写真」というものがあり、その前でふと思う私と友人。

「同じ大学でよく会えるのに、なんで写真を送るのかな?」

「子規は中退しているからね。大親友の君に、僕の写真を送るよって?」

「写真を撮ったから、君にもあげようとか」

「君のために写真を撮ったよ、とか」

……この時代、どんな機会に写真を撮るのか、どんな場合に人に写真を上げたりするのか知らないもので、妄想に走る私たちでした。

 

高浜虚子の勧めで作家へ。

 

大学卒業後、高等師範学校の英語教師、旧制松山中学教師、熊本市の第五高等学校英語教師などを経てイギリス留学へ。この間、結婚もして、俳壇では活躍を見せ始めていましたが、帰国後、第一高等学校と東京帝国大学の講師になるもののいろいろうまくいかず、神経衰弱に。そんな折、高浜虚子の勧めで精神衰弱を和らげるため『吾輩は猫である』を執筆し、『ホトトギス』に発表されたそうです。

精神衰弱を和らげるために小説を書く、というのはおもしろいですね。特に『吾輩は猫である』のような話は、書いていても楽しそう。小説家としての才能は後世まで残るほどのものであったから、高浜虚子、ナイスです。

 

それが、教職と執筆の両立が大変になり、執筆に専念するため朝日新聞に入社、自身が文芸欄を担当して連載小説を書くようになると、今度は執筆が佳境に入ると、子供たちにあたるほどのイライラぶりを発揮していたようです。

やはり……連載小説って、大変そうですよね。胃弱もひどくなるわけだと思います。

 

以前話題になりましたが、「こころ」を読んだ小学生からの手紙に、答えて送った漱石の手紙の展示もありました。

「あなたは小学の六年でよくあんなものをよみますね。あれは小供がよんでためになるものじゃありませんからおよしなさい。ところで私の住所をどうしてしりましたか?」

というような内容です。まじめな人だな~と思います。

 

 

漱石の描いた絵

 

 以下の引用の、ページはこの本から。

草枕 (新潮文庫)

草枕 (新潮文庫)

 

 

草枕』の主人公は画家であるので、絵を描くべきところ、

こんな抽象的な興趣を画にしようとするのが抑々(そもそも)の間違である。(P82)

と言って、音楽ならいいかも。しかし音楽は不案内。詩にはなるまいか、と漢詩を作るところがあります。また、

こうやって、名も知らぬ山里へ来て、暮れんとする春色のなかに五尺の痩躯を埋めつくして、初めて、真の芸術家たるべき態度に吾身を置き得るのである。一たびこの境界に入れば美の天下はわが有に帰する。(P151)

と、その理想の心境にたどり着いていることを宣言して、まだ一枚も絵を描いていないけど、今の自分は真の立派な画家だ!と言って、

こう云う境を得たものが、名画をかくとは限らん。然し名画をかき得る人は必ずこの境を知らねばならん。(P151)

と、堂々という辺り、漱石はやっぱりおもしろい。ユーモアがあるなと思います。

 

そんなわけで、なにやら高尚な気分に到達したときに、これをどうやって表現するか、ということを考えた結果らしく、漱石先生の手になる絵の展示が数点あり、日本画で、掛け軸になるよう立派に表装されていました。

が、絵についてはかなり微笑ましいというレベルだと思います。笑

 

他にもいろいろ見どころがありました。養父との離縁状とか(気の毒でたまりません)、今回の企画展のために、若い人たちが描いた、本のPOPなんかも楽しかったです。

 

 

おみやげ

漱石グッズがたくさん作られて販売されていました。

私のおみやげは、マスキングテープと付箋です。猫は絵になりますね。

 

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