映画「ドリーム」ほんとに楽しい、人種・性差別解消物語
アカデミー賞授賞式で、この3人が登場した時からとっても楽しみにしていました。
左から……ジャネル・モネイ、タラジ・P・ヘンソン、オクタビア・スペンサー
「ドリーム」を観てきました!
オフィシャルサイト:映画『ドリーム』オフィシャルサイト - 20世紀フォックス
映画.com:ドリーム : 作品情報 - 映画.com
IMDb:Hidden Figures (2016) - IMDb
この映画は、全米でよく売れて、今年の1月公開から8月までのボックスオフィスのデータがあるので、ロングランになりました。でもそれも納得!!のおもしろさでした。
黒人であること、女性であることの二つの差別と闘いながら、実力で頭角を現していく3人の姿は本当に爽快です!
1961年、ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所で働く3人の黒人女性。公民権運動真っただ中の時代、人種隔離法がだんだん廃止される中、ヴァージニア州は人種隔離政策をとりつづけている。トイレもバスも図書館の書棚も分けられているんです。
以下、3人の女性を紹介しつつネタバレの内容も含んじゃいます。
キャサリン
幼い頃から数学の天才なことを認められて教育を受けてきたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めて宇宙特別研究本部に配属されます。
職場は、秘書のような女性以外は白人男性ばかり。カラード(有色人種)用のトイレがないので、用を足すために離れたビルまで走る毎日。でも数学の天才でめきめき頭角を現していきます。
タラジ・P・ヘンソン、いいですね!TVドラマの「Empire 成功の代償」では、ムショ帰り、ヒップホップ界の大姉御を演じて大人気になっています。
ドロシー
“西計算グループ”……クオーテーションマーク付きなのは、カラード女子グループなんですね。ここのリーダー、ドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は管理職の仕事をこなしながら、その身分はありません。「黒人グループには管理職を置かない」と却下されてるのです。この時代、計算は大きな電卓からコンピュータへ移行していきます。NASAにも、IBMのどでかいコンピュータが導入される。計算女子はいらなくなる!?ドロシーはFORTRAN(初期のコンピュータ言語)の本を盗んできて(図書館で借りられないから)勉強を始め、グループの女性たちにも教えます。とっても先見の明があるのだ。(……ちなみに、IBMって、International Busines Machines Corp. なんですね。古いゆえにダサい名前だった……。そして、導入されたコンピュータの入力方法はパンチカード!!若い人は知らないでしょうね( ;∀;)、パンチカード……)
オクタビア・スペンサーいいですよね!小さくてずんぐりした立派な身体に大きな目。意志の強い素晴らしい女性のようでもあり、狸の置物のようでもあります。「ヘルプ 心がつなぐストーリー」でアカデミー賞助演女優賞を受賞しています。
メアリー
技術部への転属が決まったメアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニアを志している。白人男性だったらとっくにエンジニアになっているわ!というメアリーは、白人専用の学校への入学に挑戦する。
ジャネル・モネイ、美しい~!ジャネル・モネイと、キャサリンの彼氏を演じるマハーシャラ・アリは、アカデミー賞作品賞受賞作の「ムーンライト」でも共演していました。まさに旬の役者さんたち!
マハーシャラ・アリは「ムーンライト」でアカデミー賞助演男優賞を受賞しました。
でも、ジャネル・モネイを初めて見たのはこの大ヒット曲です。
(2:20頃から) ♪Carry me home tonight~♪
Fun.: We Are Young ft. Janelle Monáe [OFFICIAL VIDEO]
リーゼントに黒スーツで登場することが多くて、かわいいなぁと思っていました。アルバムも出してる歌手なんですが、もう女優の方にシフトしているのかな?
この映画は、語りたいことがいっぱい過ぎるのですが、配役がとてもよくて、
とっても気難しい、とうわさされているキャサリンの上司が、とってもすてきなロマンスグレーになったケビン・コスナー。キャサリン登場で脅威を感じる数学者に、TVドラマ「ビッグ・バン・セオリ―」のジム・パーソンズ。
ジム・パーソンズは、このTVドラマでゴールデングローブ賞、エミー賞で主演男優賞を受賞している人気者!その役どころも空気の読めない天才科学者なので、観客のツボをおさえています。
しかし、私でさえ生まれる前の時代、コンピュータの使い方がわからないような時代に、ロケットに人を乗せて飛ばしていたんだな~~~と思うと、人間てすごい!と思わざるを得ません。
コンピュータの研究が功を奏してコンピュータ部門の責任者になったドロシーに、女性管理職のキルステン・ダンストは、自分の配下の白人女子も使ってほしいと頼みに来ます。立場が逆転ですね。
キルステンが、「自分はそういう(差別というような)気持ちはないのよ」と言うと、ドロシーは「あなたがそう思い込んでいることは、わかるわよ」と切り返します。
この感じ、現代でもすごくあるようです。白人の人は、白人に限らないかもしれませんが、「レイシスト(人種差別する人)」と言われると、あわてて否定する、そんな場面をよく見ます。言われるまで気づかない、意識はしていないけど、偏見や差別はそこにあるんですね。
このお話は実話をもとにした小説が原作なので、
ドリーム NASAを支えた名もなき計算手たち (ハーパーBOOKS)
- 作者: マーゴット・リーシェタリー,山北めぐみ
- 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
- 発売日: 2017/08/17
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3人の名前も実名。その元のご本人たちの写真やその後も紹介されました。
アカデミー賞の授賞式では、本物のキャサリン・ジョンソンさん、車いすで登場!
御年98歳!!!
Oscars 2017: Katherine Johnson with Hidden Figures Cast
このキャサリンさんのお姿を見た時、私は白人だと思ってしまったんです。映画の最後の写真でも、ドロシーとメアリーは明らかに黒人、でもキャサリンさんは白人なのかな~と思ってしまいましたが、この方も黒人でした。本当にすごい人たちです!
(おまけ)その1
サウンドトラックはファレル・ウィリアムズがやってるんです。悪くなりようがありません。
ファレル、メアリー・J・ブライジ、アリシア・キーズ、それにジャネル・モネイも歌っています。豪華です。
(おまけ)その2
「ドリーム」って邦題は、漠然としているし検索しにくいしあまりよくないですよね。
当初、「ドリーム 私たちのアポロ計画」とつけられた邦題、「アポロ計画じゃなくて、マーキュリー計画だろ!」と激しく突っ込まれたそうです。20世紀フォックス担当者は、それはもちろん承知していたが、アポロ計画のほうがイメージしやすい……と思われたそうですが、ツッコミの激しさに後半部分を落としました。
詳しい内容はこの記事で。
原題の Hidden Figures は、(たぶん)「陰の立役者」みたいな意味で、figuresが数字のことも人物像も表すので、うまくつけられたタイトルだと思います。アカデミー賞授賞式の頃はまだ邦題がなかったので、「ヒドゥン・フィギュアズ」と紹介されていたと思いますが、どちらも難しい単語じゃないし、このままでいってもよかったような気がしますね。
「ドリーム」という言葉自体、あまり映画中で使われていなかったように思います(……この辺、ヒアリングに自信なし)。でも、公民権運動で活躍したキング牧師の名言、I have a dream は連想されますね。