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この映画観たよ。

1月に読んだ本のまとめ アフリカ文学の父チヌア・アチェベ『崩れゆく絆』

今月の1冊は、アフリカ文学の父、と言われるチヌア・アチェベの『崩れゆく絆』です。

 

チヌア・アチェベ。1930年ナイジェリア生まれ。イギリスで教育を受けたクリスチャンだ。

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『崩れゆく絆』を発表したのが1958年で英語で書かれた。アフリカ文学の父、と呼ばれるからには、アフリカ人によって書かれたアフリカについての文学は、その以前にほとんどなかったのだろう。文字でなく口承で伝える文化だったからだ。(たぶん)。 

 

この本で、植民地になる以前のアフリカにも独自の豊かな文化があったこと、ヨーロッパの植民地支配は、宗教を先頭にやってきたことを知り、なんだかとても衝撃を受けて、「万葉集」を読んでもアチェベ、「沈黙」を観てもアチェベ、『ジャングルブック』(舞台はイギリス植民地のインド)を思い返してもアチェベと、物差しが一本増えたような思いです。

 

崩れゆく絆 (光文社古典新訳文庫)

崩れゆく絆 (光文社古典新訳文庫)

 

あぁぁ、この本は読めてよかった!!19世紀末、ヨーロッパ入植前夜のナイジェリアの町から始まる物語。人々は古くからの掟を守り、神々に仕え、豊かな文化を持っていた。主人公は力自慢の厳しい男で、よく働き多妻の家族を養う。結婚式、葬祭の様子は豊穣と絆の強さを表す。後半、宗教と武力と共にヨーロッパ文明が入ってくる。何語で書かれているんだろう、どんな人が訳したのかしら?と思っていたら、書かれたのは英語で、文中のイボ語に関する注もなく、わざと違和感を覚えるように書かれているという。

日本語はカタカナにして何語でも読めてしまう言葉、と自負(笑)していたのですが、ンから始まる名前とか、なかなか手強いものでした。【ガーディアンの1000冊】1月イベントで読みました。85冊目です。

読了日:01月24日 著者:チヌア アチェベ

 

 

 

1月の読書メーター
読んだ本の数:22
読んだページ数:5131
ナイス数:1418

 

あなたのゼイ肉、落とします

あなたのゼイ肉、落とします

 

 この本で年越ししてしまったので、何かダイエット系の目標を立てないと~!という気になりました(*‘ω‘ *)。太ってしまった元美女。親に逆らえなくて太ってしまう女子高生、太っていたころの記憶をなくしたエリートサラリーマンたちが、ふと目を止めるのは「心のゼイ肉も落とします」の一行だ。最後は10歳の男の子。肥満の理由は栄養不足だなんてかわいそうだ。子供の貧困話に切なくなる私。でも小萬里さんの解決方法は子供に自炊を教えることだ。人生を片付けてくれる十萬里さんの妹。好感を持ちました。

体重を減らすには、摂取カロリーより消費カロリーが多くなるようにするしかないので、小萬里さんに特にすごいコツがあるわけではないのですが、作中、食前にキャベツの千切りを食べなさいと言われている人がいて、それを私も実行していたら、1か月でちょっと体重が減りました。びっくりです!

読了日:01月01日 著者:垣谷 美雨

 

クラウドガール

クラウドガール

 

 新聞連載で読みました。金原さんは『蛇にピアス』以来。「スナチャ」「EDM」と説明なしに出てきて、新聞の読者層にわかるのかな……?(私はかろうじて、笑)と思いつつ読みましたが、姉妹の話が興味深くて毎朝楽しみでした。危ういように見える妹よりさらに危うい姉。最後のほうはあっとびっくりさせながら、妙にうまくまとめたな、感を持ちました。おもしろかったです!

読了日:01月05日 著者:金原ひとみ

 

スリー・カップス・オブ・ティー (Sanctuary books)

スリー・カップス・オブ・ティー (Sanctuary books)

 

 すごいアメリカ人だ、グレッグ・モーテンソン。K2登頂失敗の時助けられたパキスタン山奥の村で、子供たちが寒空の下、外で勉強しているのを見て、学校を建てて恩返ししようと村長に約束する。アメリカに戻り支援者を得て、材木を買い込んで村へ向かうと、まず橋が必要だ、橋がなければ材木を運べないから。アメリカへ取って返し、また資金調達。万事この調子で、まず熱い想い、猪突猛進的実行力、やりながら学んでいく力でパキスタンアフガニスタンに学校を多数建設した。

アメリカに嫁と子供をおいて、パキスタンと往復する日々。次第に活動が認められCAI(中央アジア協会)という組織を支援者に作ってもらい、会長になる。タリバンが侵攻してくる地域で、学校建設と言っても一筋縄ではいかない。そして9.11の勃発。しかしそれらを現地の人たちの信頼を得て乗り越え学校建設を実現していく姿が描かれている。基本的に直観的で大雑把な人らしく、時間やお金の管理には向いていないようで、のちにCAIの会長職を解かれたそうだ。でもその位の人でないとこれだけのことはできないのだろう。

読了日:01月06日 著者:グレッグ・モーテンソン,デイヴィッド・オリバー・レーリン

 

 パリに戻った主人公は一家でゲルマント家の一角に引っ越す。ゲルマント公爵夫人に熱を上げ、サン・ルーに公爵夫人に紹介してもらおうと思い、ドンシエールの兵営を訪ねる。ここで主人公がサン・ルーはもとより他の軍人たちにも好かれて大事にされているところをみると、一人称小説なので今までよくわからなかった、主人公が社交社会で受け入れられている様子がわかったような気がする。病弱な青年だが頭がよくて見識が高い……といった感じかな。そして立派な趣味のいい青年が粋筋の女に振り回される話。今回はサン・ルーだ。

読了日:01月10日 著者:プルースト

 

生き辛さを抱えて生きる人に起こる、不思議な現象。そんな短編集で、表題作に得も言われぬ楽しさを感じた。先日テレビで西加奈子さんが「読んでくれた人が一人でも救われればなと思って……」というようなことを言っていた。そんな風に思って書いているのかと納得する一冊だ。この本の解説を又吉直樹さんが書いてくれて、その解説を読んで『舞台』が書けた、というような雑誌の記事を読み、手に取った。又吉の解説は一作ずつについて丁寧に書かれていて並だとおもうが、最後の一文に、そうかと思う「絶望するな。僕たちには西加奈子がいる。」

読了日:01月11日 著者:西 加奈子

 

舞台

舞台

 

読書会のために再読です。太宰ファンの人は、父に対する確執などの点で「人間失格」のオマージュとしておもしろく読めたそうです。「セントラルパークで寝ころびながら読むために本を取っておく」という気分に共感できるかで意見が割れました。幽霊が見える設定は必要なのかどうか。また躁うつ病を入れて病気にしちゃうのはどうか、っていうことも話題になりました。私は幽霊が見える設定は、グラウンドゼロで幽霊に囲まるシーンを書きたかったのかなと思います。母に対する視線が厳しすぎるのは、女性の書き手だからという感じもしました。

読了日:01月13日 著者:西 加奈子

 

トレインスポッティング

トレインスポッティング

 

 エディンバラの街、リースの青春群像。主人公はレントンだが、登場人物が多くてメモを取り始めるとあっという間に30人を超えた。レントンはヘロイン中毒なのだが、その様子が事細かに書かれ、私の人生でこんなにドラッグにまみれたことはないというくらい(笑)。中毒、クリーン、中毒を繰り返すレントン。周囲の友人たちも、アル中、犯罪、暴力などいろんな状況を抱える。しかし、互いの家族のことまでわかっている友人たちの間には断ちがたい絆がある。ほこっとするいいエピソード、笑えるエピソード、悲惨なエピソードが連綿と続く。

表紙は、映画化された時の主人公、若き日のユアン・マクレガー。訳者あとがきを読んですぐに映画が観たくなりました。Amazonプライム対象です(^^♪。映画のほうは登場人物・エピソードが絞られて、わかりやすく、でもガツンとくる作品でした。20年ぶりの続編映画「 T2 Trainspotting 」が、今年公開になるそうです。続編の原作のタイトルは『トレインスポッティング ポルノ』です。

映画では、作者が、座薬型のドラッグをレントンに売りつける売人の役で登場。本の冒頭に作者の写真と「アムステルダム在住」とあって、読後はニヤリとしてしまう。【ガーディアンの1000冊】84冊目

読了日:01月17日 著者:アーヴィン ウェルシュ

 

インドのジャングルで、オオカミに育てられた少年、モウグリとともにジャングルの世界を体験する。ワクワクしながら読んでいます。第1部には「モウグリの兄弟たち」「カー登場」「トラよ、トラよ!」「恐怖の始まり」「ジャングル、村をのむ」を収録。原作も2冊に分かれているが、この偕成社文庫版では2冊合わせたものからモウグリが出てくるものだけを集めているらしい。「恐怖の始まり」以降は The Second Jungle Bookから。感想は第2部で。

読了日:01月19日 著者:ジョセフ・ラドヤード・キップリング

 

 オオカミに育てられたモウグリは、一度は人間社会に戻り、その悪い面を目の当たりにしてジャングルへ戻ってくる。大きくたくましく成長して、今やジャングルのリーダーだ。しかし賢い獣たちが予言したように、人間の世界に戻る日がやってくる。第2部は「死の棒」「赤犬」「春をかける」に、ジャングル・ブック以前に書かれたモウグリの話、「ラクにて」を収録。これが時代的には一番最後で、モウグリはお嫁さんを得て、年金がもらえる(笑)職も得る。ジャングルの掟を熟知し、いろんな動物の言葉が話せるモーグリの冒険、楽しかったです。

読了日:01月19日 著者:ジョセフ・ラドヤード・キップリング

 

車夫2 (Sunnyside Books)

車夫2 (Sunnyside Books)

 

 『車夫』の続編が出た(^^♪!と、いそいそと読む。両親が次々と蒸発し、高校中退を余儀なくされ、浅草で人力車の車夫になった走(そう)くん。今回は6章、5人の語り手が登場する。そのうち3人は高校生、3人は大人だ。どのエピソードからも彼の軽やかな走りと、力強く成長していく姿がうかがえる。走くんの人力車に乗って癒される人たちの話を読むと、ますます人力車に乗ってみたくなる。「願いごと」の章がぐっときました。

読了日:01月20日 著者:いとうみく

 

よるのとしょかん

よるのとしょかん

 

読み語りしてもらいました。夜の図書館は、動物たちが集うところ。この図書館を運営しているのは女の子と3羽のフクロウ。楽しくてかわいくて、この女の子は何者?と思うとちょびっと不気味なお話でした。

読了日:01月20日 著者:カズノ・コハラ

 

おばけのもり (ことばあそび絵本)

おばけのもり (ことばあそび絵本)

 

読み語りしてもらいました。折り句、というのですね、お化けの名前の一字ずつを頭文字にして文章を作ります。石津ちひろさんはこんな言葉遊びがほんとにうまくて、吸血鬼には、爆笑でした。

読了日:01月20日 著者:石津 ちひろ

 

あおのじかん

あおのじかん

 

 美しい絵に陶酔し、優しい言葉に聞きほれます。翻訳者の石津ちひろさんの講演会で、石津さんに読んでいただきました。

読了日:01月26日 著者:イザベル・シムレール

 

 

まさかさかさま動物回文集

まさかさかさま動物回文集

 

石津ちひろさんの初めての本です。絵は誰に描いてほしいか編集者に聞かれ、大ファンなので長新太さん!と言ったところ、長新太さんはちょっと(大物すぎる)……と言われ、編集者が佐野洋子さんに依頼をしたところ、佐野さんが「もっとぴったりの人がいるわ、長新太さんよ!」と言ったそうです。「チンパンジーから、怪人パンチ」!動物回文おもしろいです。

読了日:01月26日 著者:石津 ちひろ

 

ハナちゃんとバンビさん

ハナちゃんとバンビさん

 

ハナちゃんとバンビさんの歌は本当にお父さん(石津ちひろさんのご主人)が作った歌で、お嬢さんは乗れるようなバンビちゃんを持っていらしたそうです。こんな素敵なお話になっていいなぁ。石津さんらしい言葉遊びにもなっています。

読了日:01月26日 著者:石津 ちひろ

 

かばのさら・ばらのかさ (こどもえほんランド)

かばのさら・ばらのかさ (こどもえほんランド)

 

 アナグラム絵本。高畠純さんの絵もとても楽しい。言葉遊びの楽しさは、大人でもくすりと笑ってしまうものだが、子供ならいくつくらいからわかるのかな?

読了日:01月26日 著者:石津 ちひろ

 

石ノ森章太郎『くだんのはは』小松左京原作。第二次大戦敗戦間近の芦屋市。当時の戦争を語りながら、また大戦が起こる予兆を示す怖い終わり方だ。冷戦時代に描かれた話だが、未来の戦争の可能性は今また高まっている……u_u 「件(くだん)」という伝説は初めて聞いた。他、手塚治虫ら豪華なメンバーの8編を収録。地球をまるごと何百回も滅ぼせる核兵器の存在に慣れっこになってしまっていることを思い出させてくれた1冊でした。

読了日:01月29日 著者:石ノ森章太郎,星野之宣,山上たつひこ,ひらまつつとむ,諸星大二郎,松本零士,手塚治虫,藤子・F・不二雄

 

ポー名作集 (中公文庫)

ポー名作集 (中公文庫)

 

推理小説やミステリー小説という新ジャンルを開いたポーを、大人になってちゃんと読むのは初めて。貧乏貴族探偵デュパンの説明がとても長くて、まだ会話が続いてますよ〜という証拠?の、閉じないカギかっこ(」がなくて「だけのもの)が続く小説を読んだのは久しぶり。みんな子供の頃に読んだよな〜思うけど、影響を受けた別の作品を読んだのかも。

読了日:01月29日 著者:エドガー・アラン ポー

 

万葉集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

万葉集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

 

万葉集、お久しぶりです。そしてこれはとても入りやすい本でした。懐かしいうたにたくさん出会えました。アチェベなど読んでいたので、この時代から文字で文化が残っている日本てすごいな~と思ったり(いや、語りの文化を下にみるわけでは決してないのですが)、防人のうたの芸術性を反政府的とか抜きにして取り上げていたんだなと思ったりしながら読みました。

読了日:01月30日

 

闇の守り人 (偕成社ワンダーランド)

闇の守り人 (偕成社ワンダーランド)

 

 再読だがおもしろくて、ちょっと読むつもりが本が置けなくて一気に読んでしまった。「バルサは苦笑した」いつも苦笑しているめっちゃ強いバルサだが、大声で泣けてよかったな〜。TVドラマは、もう少し先の話のようだが、順番に追いかけよう。

読了日:01月31日 著者:上橋 菜穂子

 

夢の守り人 (偕成社ワンダーランド)

夢の守り人 (偕成社ワンダーランド)

 

 守り人シリーズ第3話。2話でバルサの故郷カンバル王国で、バルサとジグロの過去に区切りをつけて、今回は新ヨゴ皇国、タンダのいるところへ舞台を戻す。チャグム、シュカ、ジンなど懐かしい顔ぶれが出て、楽しいものの、若き日のロマンスまで語られるトロガイ師のエピソードに、TVドラマの高島礼子さんのやり過ぎ特殊メイクがちらついて辛い(笑)。身体を乗っ取られたタンダとの死闘が苦しいものの、夢のように、花のように美しい話でした。

読了日:01月31日 著者:上橋 菜穂子

 

 

今月は地元の読書会で、詩人・絵本作家・翻訳家の石津ちひろさんの講演会を開いたので、昨年4月からちょっとずつ石津さんの本を読んでいました。

実際にお会いした石津ちひろさんは、すらりと背が高くほっそりとした美女で、とても××歳には見えず、「何かお題を出してください」と言って、その場で回文を作ってしまうようなことばの魔術師でした。

お題「ぶどう」→「とん、ぶどう、どぶんと。」机の上をとん、とたたかれて、ぶどうが落っこちてしまったんですね。

お題「稀勢の里」→「土佐の関取と、稀勢の里」土佐出身で、稀勢の里と対戦した関取がいまして……。

 

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