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この映画観たよ。

8月に読んだ本のまとめ 森見登美彦『新釈 走れメロス』と名作たち。

8月は、読書も、ブログもさぼってダラダラしていました。9月に入ったら、ブログ毎日更新!と思ったものの……。反省して、一番書きやすい先月読んだ本のまとめです。

 

今月の1冊は、これです!

 

新釈 走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇

 

 わぁ、この本に関するブログの件数が多い!

 

 5作とも原文を読んでから森見新釈を読んだので、とても楽しい読書時間を持てました。ぬるい「山月記」の主人公斎藤が、その後の4編でいい味を出していたり、連作になっているところもよかったです。「藪の中」は3者の証言の対立関係がうまくないと思い、「メロス」はあきれるほどのハチャメチャぶりがかえって楽しく、「桜の森」は短編としては一番よくできていると思いました。「百物語」はオールスターキャストになり、原作同様オチのない終わり方がこの本にふさわしいと思いました。

森見さんは「夜は短し……」から2作目ですが、万城目学さんと混同してしまうのは京大周辺を舞台にしているからですね。原作を先に読むかどうか悩みましたが、森見登美彦ワールドにいま一つついていけない私は、先に読んで正解だったと思います。

読了日:8月29日 著者:森見登美彦

 

この、森見登美彦さんがパロディ化した原作本が、すべてkindleで無料で読めてしかも短編なので、迷いながらも原作を先に読んでしまいました。

その原作5冊がこちら。

 

山月記

山月記

 

久しぶりに再読。「臆病な自尊心と尊大な羞恥との所為である」 簡潔な名文で語られ、短い作品ながら含蓄深い。今回は、李徴が走りながら虎に変わっていく場面、虎である時間が長くなっていく恐怖を語るところ、最後に虎の姿をもう一度見せるところに特に魅力を感じた。李徴の聞き手となる袁傪がその場面で動ぜずに旧友の話を聞き、彼の詩作を聞き取りながら、非凡を思わせるものながら何処か欠けるところがあるのでは、と思う。厳しいですね。 読了日:8月23日 著者:中島敦

 

 

藪の中

藪の中

 

黒澤明の「羅生門」の原作として最初に知った作品です。薮の中の死体をめぐり、すべて関係者の証言で構成される。発見者の木樵から始まり、次第に当事者たちの証言へ。三者三様の証言に読者は必ずそれぞれの見解を持つだろう。全く見事な作品だ。森見登美彦『新釈 走れメロス』の予習中。よくもこんな名作ばかりに挑戦して……。おかげで再読できてうれしい!! 読了日:8月24日 著者:芥川竜之介

 

走れメロス

走れメロス

 

よく知っている話と思っていたが、細部にいろいろ気になることもあった。でもおもしろかったです。「メロスは激怒した。」「勇者は、ひどく赤面した。」森見さんがどう料理するのか楽しみです。 読了日:8月26日 著者:太宰治

 

桜の森の満開の下

桜の森の満開の下

 

満開の桜の下、一人だけでいると恐ろしくなる、その感覚が今ひとつ身に沁みてこなくて(西行の辞世の句をイメージしてみたりもしたのだが……)、ラストも今一つな感じで終わってしまいました。作者より、自分の力不足を感じます。u_u この美しい女は、ただの悪趣味な意地悪女だったのでしょうか。それとも本当に禍々しいものだったのでしょうか?森見新釈、予習中です。 読了日:8月26日 著者:坂口安吾

 

百物語

百物語

 

この語り手はずいぶんスノッブな男だと思って読み始め、嫌な男を描いているのかそれとも鴎外先生ご本人?と思ったら、どうやらご本人の方らしい。笑 さすが明治の秀才、高級官僚で文学者。「傍観者と云うものは、やはり多少人を馬鹿にしているに極まっていはしないか」とご本人もおっしゃっているし。芸者の太郎についていろいろ考察を泳がせるもののなんだか的外れだったり。とてもおもしろく読めました。しかし日本語では表せぬとばかりに出てくる横文字の片仮名がめんどくさい。いっそ原文で表記してもらいたいくらいだ。 読了日:8月27日 著者:森鴎外

 

 

2016年8月の読書メーター

読んだ本の数:22冊
読んだページ数:2819ページ
ナイス数:1609ナイス

 

 

 

あたらしい憲法のはなし (小さな学問の書 (2))

あたらしい憲法のはなし (小さな学問の書 (2))

 

 ”この「あたらしい憲法のはなし」は、「日本国憲法」が公布された翌年に、文部省が作った中学一年用の社会科の教科書を復刊したものだ……この教科書からぜひ学んでほしい。(本書まえがきより)”1947年~1952年まで使われたこの教科書は、戦争で身内を亡くしたり、家を無くしたり、ひもじい思いをした子供たちに、そんなことが二度と起こらないように、憲法を作ったことと憲法をわかりやすく解説する、理想に燃えた内容だ。復刊した本書には、漢字にルビが付けられて若い人に読んでもらいたい出版社の気持ちが熱く感じられる。 読了日:8月1日 著者:童話屋編集部

 

大岡信詩集 丘のうなじ

大岡信詩集 丘のうなじ

 

「初秋午前五時白い器の前にたたずみ 谷川俊太郎を思ってうたふ述懐の唄」「死ぬときは/たいていの人が/まだ早すぎると嘆いて死ぬよね」「君のことなら/何度でも語れると思ふよ おれは」この詩を詠んだ大岡信は40代でした。 これは大岡信の詩集です。谷川俊太郎が編みました。そして40年後の返歌ならぬ返詩が「あとがきにかえて」に載せられました。「微醺をおびて」「おおおかぁ/おれたちいなくなっちゃうんだろうか」「早すぎるとはもう思わない/でもおれたち二人の肉だんごもいつかは/おとなしくことばと活字に化してしまうのかな」

朝日新聞にこの詩集の記事が載り、大岡信さんと谷川俊太郎さんの友情に胸が熱くなりました。闘病中の大岡信さんは、谷川さんの返詩を枕元で奥さんに読んでもらって涙した……というようなことが書いてありました。2015年6月19日付・文化面でしたが、朝日デジタルではもう見られません。u_u 読了日:8月4日 著者:大岡信

 

オ・ヤサシ巨人BFG (ロアルド・ダールコレクション 11)

オ・ヤサシ巨人BFG (ロアルド・ダールコレクション 11)

  • 作者: ロアルドダール,クェンティンブレイク,Roald Dahl,Quentin Blake,中村妙子
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 単行本
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孤児院に住む不幸なソフィーと、心やさしいオ・ヤサシ巨人。二人が活躍して人喰い巨人たちをやっつけるお話だが、ダールらしい設定のおもしろさと残酷さ、そして大団円と満足できる読後感だ。読書会で映画になった児童文学を読んでいて、先月『チョコレート工場』を読んだが、これは9月に公開になる「BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」の原作。優しい巨人を「ブリッジ・オブ・スパイ」のマーク・ライランスが演じるので楽しみです。

それにしても映像化されているダールの作品の多いこと……!

www.imdb.com

読了日:8月6日 著者:ロアルドダール

 

映画になった児童文学

映画になった児童文学

 

「アリス」「若草物語」「小公子」「ピーター・パン」の4作品とその映画について論じたもので、4作品とも読書会などでわりとしっかり読んだ本だったのでとてもおもしろかった!好きでない人にはどうおもしろいかうまく説明しにくい「アリス」の魅力がよく書かれ、最近再読しながら思ったジョン・テニエルの力の大きさがはっきり言及されている。「若草物語」はどうも説教臭い話だと思っていたのだが、時代の制約があったことがわかり、ウィノナ・ライダーのジョーに感情移入しにくい理由もわかった。

「小公子」は本がこれほど嫌われたことを知らず、それでいて盛んに映画化されたことなど興味深かった。この4冊の中で「ピーター・パン」だけはが映画(ディズニー)を先に観て、本は後で読んで夢中になったのだが、今回の論点はウェンディの家族側に重く、なるほどとは思ったものの、原作本の魅力があまり語られずおもしろくなかった。読了日:8月7日 著者:川端有子,水間千恵,吉本和弘,横川寿美子

 

 姜尚中さんの漱石の講演会が熊本であるのだ。でも熊本までは行けないので代わりにこの本を読む。吾猫、三四郎、それから、門、こころ、と最近再読した本ばかりで、私もそんな読み方した〜!とうれしく思うところ多々あり。『こころ』については、Kと先生が自殺する死の多い話なせいか、「いのち」を受け継ぐ話なのだと強調。若い人向けの本なので、漱石から「悩む力」と「いのち」を受け継いでほしいのだな、と姜尚中さんの心意気が伝わってくる。
『門』にも出てくる、「父母未生以前本来の面目は何」(父母が生まれるよりずっと前にはなにがあったか)という公案。宗助は大した答えが出せずに挫折感を持って家に帰るが、姜尚中さんが円覚寺の横田管長から得た答えは「いのち」。漱石も同じように考えていたのではないかという。 読了日:8月7日 著者:姜尚中

 

絵本とであえる楽しい散歩 (玄光社MOOK)

絵本とであえる楽しい散歩 (玄光社MOOK)

 

夏休みのお出かけに、図書館・本屋好きの息子と行ける場所を探そうとこの本を手に取りました。「トムズボックス」「クレヨンハウス」「ブックハウス神保町」「ブックギャラリーポポタム」は、原画も見られる絵本屋さん。絵本充実の古本屋と大型書店、絵本とつながる美術館に、関西圏の情報もあって絵本好きにはかなり充実した内容です。表参道に行こうかな……と息子に聞いてみると「国会図書館に行きたい」と言うのです。(゚д゚)!いいでしょう、18歳になったことだし。(国会図書館のことは載っていません) 読了日:8月9日 

 

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)

 

 ミア・ワシコウスカの映画「ボヴァリー夫人」を見損ねたまま、未練を残して原作を読み始めました。冒頭に「僕たちが……」という僕たち(シャルルの学友たち)はあっという間に霧消してしまい、内気なシャルルは二度目の妻にエンマをもらう。サブタイトルに「地方風俗」とあり、この時代、この地方の人々が露わに描かれる中、エンマ・ボヴァリーは上流階級にあこがれ、退屈し、絶望し、夫を嫌悪し、自分を磨きたてて不倫へ走り、破産する。(しかしいくら古典とはいえ、背表紙のあらすじはネタバレしすぎ u_u ) 

原作を読んでみると、ミア・ワシコウスカはエンマを演じるにはちょっと美貌不足では?と思います。ハッとするような美人でないと説得力のない話になってしまうように思いました。訳者解説で発表当時「公衆の道徳及び宗教に対する侮辱」の罪を問われたり、「自由間接話法」という斬新な文体で華やかな脚光を浴びたことを知る。「自由間接話法」については、同じ文の中に客観的な視点と誰かの視点が一緒に交じっているような文は、日本語では比較的自然に行われているので、訳文は日本語のこなれてなさが目に付くように思ってしまった。

【G1000、8月イベント】76/1000冊目  読了日:8月16日

著者:ギュスターヴフローベール

 

コンビニ人間

コンビニ人間

 

主人公は自閉症スペクトラムの範囲内だな、と思いつつ読み始め、すると悪い癖でその辺ちゃんと描かれているか気になってしまうのだが、今回はそんなことを忘れるほどおもしろく読めた。一般的な価値観、感情、行動に共感する能力のない主人公は、コンビニのバイトを始めて、マニュアルに沿った業務、他の店員を見習ったしゃべり方や表情を身につけて、生きていく居場所を見つける。それでも36歳、独身、バイト生活は非難されがち。コンビニをクビになったダメ男を家で飼う(表向きは同棲する)ことにして、立場を改善しようとするが、図らずも一番頼りにしていた妹から、また18年勤めたコンビニにおいて自分がどう思われていたのかを知ることになる……。

【2016年上半期芥川賞受賞作】 村田沙耶香さんは、『しろいろの街の、その骨の体温の』を素晴らしい!と思い、『殺人出産』を気持ち悪い!と思っていたので、今回の受賞作はどうなのか、興味津々でした。『コンビニ人間』はとてもおもしろかったです。でも『しろいろの…』の方が読み応えがありました。

読了日:8月22日 著者:村田沙耶香

 

The Story of Fierce Bad Rabbit (BP 1-23)

The Story of Fierce Bad Rabbit (BP 1-23)

 

Publisher's Noteより。この本は元々編集者の娘が、ピーターはお行儀よすぎる、本当に悪いうさぎのお話が読みたい!と言ったことからできたそう。初めは小さい子向けの3冊組の蛇腹開きの形で出版されたが、本屋の店頭で客が開いたりしまったりするうちに壊れてしまうので、通常の形に分冊され、この話とモペットちゃんのおはなしの2冊が残っているそうです。 読了日:8月24日 著者:BeatrixPotter

 

こわいわるいうさぎのおはなし (ピーターラビットの絵本 6)

こわいわるいうさぎのおはなし (ピーターラビットの絵本 6)

 

シリーズを順に読んできましたが、これは文字数も少なく小さい子向け。小さい子向けでありながら、ずどん!とくるショッキングな話でもあります。最後に「つるっとなった」で笑っていいのかと思うのは大人の考えでしょうか?……でも「つるっとなった」という言葉を添えたのは石井桃子さんのオリジナルで、やはり抜群の翻訳家だと思います。 読了日:8月24日 著者:ビアトリクス・ポター

 

Story Of Miss Moppet,The (BP 1-23)

Story Of Miss Moppet,The (BP 1-23)

 

Publisher's Note より。このお話の背景はとても悲しいもので、ポターの編集者でフィアンセのノーマン・ウォーンが亡くなってから間もなく書かれたのです。その後、この年のポターは仕事に没頭し、3冊組の赤ちゃん絵本を革新的な蛇腹折りのスタイルで出版しました。……この蛇腹本の命運は、こわいわるいうさぎの方に書いた通り。客は一度開くとそれを元に戻せなかったそうです。 読了日:8月24日 著者:BeatrixPotter

 

 

モペットちゃんのおはなし (ピーターラビットの絵本 5)

モペットちゃんのおはなし (ピーターラビットの絵本 5)

 

これはとてもかわいいお話ですね!いたずらねずみに逃げられたモペットちゃんの呆気にとられた顔、タンスの上でジグを踊るねずみ、この最後2枚の絵が特にかわいいです。 読了日:8月24日 著者:ビアトリクス・ポター

 

 

地獄変

地獄変

 

嫌われ者の天才絵師が、堀川の大殿に「地獄変」の屏風絵を描くように命じられる。そのためには燃え上がる牛車とその中で焼け死ぬ上臈の姿を実際に見てみたいと言う絵師に、大殿が用意したものは……。壮絶な話の中に、大殿、絵師、娘、そして語り手についての謎が頭から離れない。これも『藪の中』同様、読み手に預けられた多様な解釈が可能な小説だ。読んでいる本の中で言及されていたので読みました。 読了日:8月25日 著者:芥川竜之介

 

大久野島からのバトン (文学のピースウォーク)

大久野島からのバトン (文学のピースウォーク)

 

大戦中この島では毒ガスが作られていた。技能者養成所に合格した!と意気揚々と島へ来た14歳の少年達を待っていたのは過酷な労働であった。島で働く人は毒ガスで身体を壊していく。生き残った少年の一人、進一は戦後毒ガス資料館の館長になるが、毒ガスが使われた中国の被害は?と問われて愕然とする。現代。クラブ活動で広島・大久野島を訪れた少女達は、この元館長の話を聞き、これからの自分たちの責任に思いをはせる。中国と日本の同じく14歳で毒ガスの被害を受けた二人が被害者・加害者として出会い、握手するところに胸が熱くなりました。

「戦争を始めたのは、日本軍国主義の指導者だって……あの戦争は、そう言ってもらえるところがあるかも知れない。でも、今度は違うわよ。今度また日本が戦争をしたら、そのときは日本の人の意志なのよ。日本国憲法は、国民一人一人が国の主役だって決めてるの。国民の意志は、選挙で示せるのよ」

「館長さんが『戦争は一気に始まらない。少しずつ近づいてくる』って言ったこと、繰り返し思い出さないといけないと思っているの」

こういう本こそ、ぜひ若い人に読んでバトンを受け取ってもらいたいものだ。だがこの内容では課題図書は無理だろうな。

読了日:8月29日 著者:今関信子

 

 

The Tale of Jemima Puddle-Duck (Peter Rabbit)

The Tale of Jemima Puddle-Duck (Peter Rabbit)

 

Publisheer's Note より。この本が出版されてから、ポターは恥ずかしいことに気がついた。キツネ紳士の絵の一つで、ニッカーボッカーのズボンをはかせるのを忘れたのだ。これを直すにはコストがかかりすぎた。でも百年後の今、テクノロジーのおかげでキツネは待望のズボンをはくことができた(P26)。図書館で古い版を探し確認しました。笑

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読了日:8月30日 著者:BeatrixPotter

 

 

あひるのジマイマのおはなし (ピーターラビットの絵本 11)

あひるのジマイマのおはなし (ピーターラビットの絵本 11)

 

卵を自分で抱いて孵したいジマイマ。農場では卵を産むとすぐに取り上げられてしまうので、外の離れたところで卵を産もうと決心します。おばかさんのジマイマ、森のキツネ紳士は礼儀正しく身なりのいい人。賢い番犬のケップと元気なフォックス・ハウンドの兄弟。これだけ役者がそろえば、後は大騒ぎです。

読了日:8月30日 著者:ビアトリクス・ポター

 

 

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