くどうなおこさんと、童話屋の田中和雄さんのお話。「のはらうた」と「折々のうた」
以前、教文館の講演会のことをブログの記事にしました。
文中、講演で使われた資料を掲載してもいいかどうか、童話屋さんにお尋ねしたところこころよくOKしてくださり、なんと童話屋さんのブログにリンクもしてくださいました。
その上、くどうなおこさんと田中和雄さんの講演会もあるのでどうぞ!とご紹介くださったので、今回は地域の読書会のメンバーを誘って、阿佐ヶ谷まで行ってきました。
(「のはらうた」のくどうなおこさん。どうしてもひらがな書きが似合います)
会場に向かう電車の中、友人が素敵な話をしてくれました。息子さんが小学生の時に、朗読が得意だというので、「のはらうた」のカマキリの詩をみんなの前で朗読したそうです。くどうさんの「のはらうた」には、みんなかわいい作者名がついています。
「おれはかまきり」 かまきりりゅうじ
おう なつだぜ
おれは げんきだぜ
あまり ちかよるな
おれの こころも かまも
どきどきするほど
ひかってるぜ
おう あついぜ
おれは がんばるぜ
もえる ひをあびて
かまを ふりかざす すがた
わくわくするほど きまってるぜ
『のはらうた Ⅰ』より
これを、みごとに朗読した後、息子さんは「カマキリ」と呼ばれるようになったそうです。先生が心配して、「みんなにカマキリって呼ばれているの、嫌がってませんか?」とお聞きになったそうです。友人は「いいえ、本人も気に入ってるんですよ!」と答えたそうです。息子さん、きまってますね!
第1部「のはらうた」が生まれた
田中和雄さんと、くどうなおこさんが登場なさると、二人とも輝くような素敵な白髪!くどうなおこさんは、笑顔がピカピカで元気のオーラが立ち上るようです。一方、田中和雄さんはハンサムでスタイルがよくて背筋がピンと伸びてとても優しそう!
以下、メモを取りながら聞いた内容から印象に残ったことです。
お二人は1935年生まれの同級生。「立って話すのが好きなんですよ」とくどうさん。「40年来の悪友、喧嘩友達です」とおっしゃるお二人は、博報堂同期入社だそうです。「日本初のすごい女性コピーライターで」と持ち上げる田中さんに、「そういうこと言うから喧嘩友達なのよ!博報堂も電通も名の通った会社じゃない時代だったんだから」というくどうさん。
博報堂を5年でお辞めになった田中さんは、渋谷に童話屋書店という、小さいけどおしゃれなお店を始めたそうです。そこを気に入って、ここで詩の朗読をしたい、と言ったのが谷川俊太郎さん。それから、まどみちおさん、岸田衿子さんなどなどが集まり、毎週のように朗読会が行われたそうです。なんて素敵なんでしょう!
先に博報堂を辞めてらした、くどうなおこさんがお店にやってきて、10年ぶりに再会。絵本を作ろう、という話になってできたのが『こぶたはなこさんのおべんとう』 だそうです。
この本に、ユニークですね、おまけの小さな新聞がついていて、「さんぼんまつタイムス」というのです。(今も売っている絵本ですが、新聞が今もついているのかよく知りません)、その中に、「ときどきのうた」という「折々のうた」みたいなコーナーがあるのです。
ときどきのうた
どんぐり
どんぐりが ぽとぽとり
やぶのなか ころころり
のねずみが ちろちろり
おいしいぞ かりこりり
(こねずみ しゅん)
これが、のはらうたのはじまりだそうです。
のはらうたをうたう、うたい手たちは動物、虫、植物、自然のものなどいろいろ。そしてみんな、なぜかしっくりくる名前がついています。
「どうやって書くの?」と聞く田中さんに、「なりきってかくのよ。どんどんできるわよ」と答えたくどうさん、どんどん催促されて、のはらうたの詩集ができたそうです。装丁にもこだわり、博報堂の時のコンペティションにかけては最強コンビ、島田光雄さんの装丁です。
これ、かわいい~♪
「おれはかまきり」の話も出て、ブルーカラーのおじさん?と思われるような人からもファンレターが来るようになったそう。そして、このかまきりのうたで、いろんな朗読の仕方も見せてくれました。きちんとした読み方の「活字読み」から、17歳のカマキリとか、おじいさんのカマキリとか。とても楽しかったです。
第2部「折々のうた」大好き
「折々のうた」は、大岡信さんが朝日新聞の朝刊1面に、29年間連載した詩歌のコラムですが、岩波から出版されていた「折々のうた」シリーズは、最初のこの巻以外はもう廃刊になっているようです。
今回、童話屋さんで季節の歌を集めて、春夏秋冬4冊を新しく刊行されることになり、
「はる」は谷川俊太郎さんの前書き、「なつ」はくどうなおこさんの後書き。
この2冊が出て、あき、ふゆ版は9月ごろ出る予定で、俳人の長谷川櫂(かい)さん、歌人の俵万智さんが寄稿なさるそうです。
くどうさん、自分は実は朝日新聞を取っていなくて、でも「折々のうた」を見たさに新聞を買っていたというお話です。こういう世界があるんだ、と書き写すようになって、折々のうたで日本の心を勉強した、とおっしゃっていました。
くどうさんの好きなうたは、前回の記事にも書きましたが、今回は田中さんの好きな句もご紹介がありました。
地虫出て
土につまづきをりにけり
上野章子
大岡さんの解説がすごいというお話。どんな解説かというと、
……この句、数ある啓蟄の句の中でも、俳諧的おかしみと天真爛漫さで群を抜いている。地虫一匹が風景全体を一人占めしてしまったようである。作者は高浜虚子の六女。「風花の遊びつかれて地に下りし」。童心と闊達な表現の一致。
「俳諧的おかしみ」「天真爛漫」「童心と闊達」この言葉たちの短く適切なところ、ほんといいですね。 (このうたは「はる」に入っていて、目次が歌の出だしと作者なので、すごく探しやすく、だからこうして記事にも書くことができてありがたいです。)
油断して
花に成たる(なったる)桜かな
三浦樗良(みうらちょら)
大岡さんの解説。
……原文には振り仮名はないが、「成たる」はこの場合、句の勢いからしてナッタルとあるべきだろう。そのようにしておく。桜の花を讃える歌や句は古来おびただしいが、こういう讃え方もあるのかと意表をつかれる思いのする一句。……
花が「ひらく」「さく」と言わずに、「成たる」としているところがキラリとする句ですが、「なりたる」かもしれない読み方を「なったる」と振り仮名をつけて、一段といい句にしてしまう所がすごいですね。
その後、すきな詩人、俳人たちのお話でとても盛り上がりました。蕪村が好きなのよ~!まどみちおさんが好きなのよ~!とおっしゃるくどうさん。
「するめ」いいでしょ。
とうとう
やじるしに なって
きいている
うみはあちらですかと……
この短さなら、すぐにこの場で人に渡せるでしょ!と、くどうさん。
なるほど~!!
(おまけの1)
おみやげに、「のはらうたⅠ」とその英訳本と「のはらうた三〇年音楽會記念」というブックレットを買ってきました。
英語の本は、中学の英語の先生をしている友人のお土産に(^^♪
- 作者: くどうなおこ,William I. Elliott,ウィリアム・I.エリオット,にしはらかつまさ
- 出版社/メーカー: 童話屋
- 発売日: 2010/04
- メディア: 単行本
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「のはらうた三〇年音楽會記念」というこのブックレット(500円)には、「さんぼんまつタイムス」の号外と、「永久保存版 のはらみんな名簿」が載ってるんですよ!
かたつむり でんきちのファンだったら、彼に5つの詩があって、それがどの本に掲載されてるってわかるようになっています。いいでしょう!
童話屋さんのHPにも載っていませんが、直接お尋ねすれば、まだ買い求められるのではないかと思います。
(おまけの2)
童話屋さんのHP童話屋 のトップに、ばーーーんと載っているこの本。 気になる~!
たったの309円。早速注文してみました。(Amazonで……(*‘ω‘ *))
「あたらしい憲法」とは、今の平和憲法が新しかった、戦後すぐのときに呼んだ言葉です。 すべてルビの付いたこの本、子供たちに読んでほしい気持ちが伝わってきます。
「あたらしい憲法のはなし」は、1947年(昭和22年)8月2日文部省が発行した中学校2年用の社会科の教科書である。1952年3月(昭和26年度版)まで使われていたが、1952年4月から姿を消した。
戦後まもなく、当時の中学生に、憲法を通して「人が正しく生きる道」「人は誰も差別されずに平等であり、自由であり、幸せに一生を送る権利がある」「民主主義、国際平和主義、主権在民主義」についてなどなど、やさしい言葉で教えてくれます。
戦争で身内を亡くしたり、家を無くしたり、ひもじい思いをした子供たちに、そんなことが二度と起こらないように、憲法を作ったことを語る素晴らしい内容ですが、5年で引っ込められたのは、どういうわけでしょうね。
ぜひご一読を!