rocorinne bookworm

この映画観たよ。

6月に読んだ本のまとめ 不思議の国と、鏡の国のアリス三昧

読書会の課題本が『鏡の国のアリス』だったため、6月に読んだ本14冊のうち、9冊が「不思議の国のアリス」とその関連本でした。初めて英語で読めたのが一番の収穫です。

私のアリス愛について、語ると長い長い……いろいろ出てきてしまいます。

f:id:rocorinne:20160708221633j:plain

 

読書会の通信に寄せた私の感想です。

 2冊のアリスは、中学生の時にはまり、何度も読み返した本です。このナンセンスな世界に遊ぶのが楽しく、奇妙な登場人物達には「また会えたね」という懐かしさがこみあげます。『鏡の国のアリス』で私のお気に入りは、大工とセイウチ、白の騎士、場面としては、名前がなくなって小鹿と一緒に森を歩くところ、羊の店にいると思ったら川でボートを漕いでいるところ。夢中になって灯心草を摘むアリスがかわいい。今回は、2冊とも矢川澄子金子國義の新潮版、河合祥一郎ジョン・テニエルの角川版に加えて、原文も読みました!(えへん、えへん!笑)

 

 矢川訳は特に詩の部分がとてもよかったです。でも子供に語り掛ける口調のような文体にはだいぶ違和感が。アリスは上流階級の子女で、もっと気取った少女だと思うのです。金子國義の挿絵は素敵なのですが、枚数が少なすぎて物足りない感じも。


 河合訳は、この方は言葉遊びが大好きなんですね~。日本語訳でも言葉遊びの楽しさを、という意図がというより意欲がもりもりなようで感心しますが、押韻を踏んだ部分に、いちいち傍点をつけてあるのは、ちょっと読みづらい感があります。昔から自分が読んでいたものはこれでもなかった……と、ちょっと探してみると、角川文庫の旧訳で、岩崎民平さんの訳でした。


 アリスの原文は難しいものと思いこんでいたのですが、今回初めて読んだところとても読みやすかったです。話をよく覚えているせいでもありますが、言葉遊びになっているところも意外とよくわかりました。アリスの口調がしつけられた通りとても丁寧になっている場面や、逆に遠慮なく口出しする様子もよくわかり楽しかったです。
訳本によってそのメリハリがあるものないものがあるように思います。


 昔からの大ファンは意外なことに私だけでした……。メンバーの一人が「この本は赤塚不二夫だ!と思いました」とおっしゃって、その読み方が一番正しいと思いました。ナンセンスを楽しむ本だと思います。子どもの本ですから難しいと思う必要はなく、チェスもアリス自身は直線に進んでいるだけですから知識もいりません。好きな人だけが余計な深読みをいくらでもできる……そんなところが魅力でしょうか。


 ディズニー映画のアリスは「私が言いつけを守らなかったからこんなことに」とさめざめと泣くシーンがあり、そんな教訓を入れてくるな、ディズニーめ!と憤慨します。ティム・バートンの映画のアリスは、不思議の国に戦争を持ってくるんじゃない!とほんと嫌になりました。


 あと、一つだけおまけです。アリスと草間彌生のコラボの『不思議の国のアリス』があるのですが(『鏡』はありません)、 楠本君恵さんの翻訳がなかなか良かったです。昔からの訳と乖離しないように、だいぶ工夫されてる様子がわかりました。 

 

 

2016年6月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:2675ページ
ナイス数:946ナイス

 

不思議の国のアリス (新潮文庫)

不思議の国のアリス (新潮文庫)

 

アリスは中学生のころ夢中になり何度も読んだが、矢川澄子金子國義で読むのは初めて。矢川訳は特に詩の部分がとても読みやすくわかりやすい。全体的に子供に語り掛ける口調のような文体だが、う――ん、ちょっと品がないような気もする。アリスはもう少し気取った少女だったような気がするので。金子國義の挿絵はよいのだが、本家(ジョン・テニエル)に比べて枚数が少なすぎるかな。【ガーディアンの1000冊、既読】

読了日:6月1日 著者:ルイスキャロル

 

 

鏡の国のアリス (新潮文庫)

鏡の国のアリス (新潮文庫)

 

読書メーターの登録数でも、不思議の国に比べると鏡の国はぐっと減るが、映画などのアリスでおなじみの有名な登場人物も出てくる。双子のダムとディー、ハンプティ・ダンプティなどは、鏡の国だけの登場人物だ。他に私のお気に入りは、大工とセイウチ、白の騎士、場面としては、名前がなくなって小鹿と一緒に森を歩くところ、羊の店にいると思ったら川でボートを漕いでいるところ。夢中になって灯心草を摘むアリスがかわいい。矢川訳は「妹たちを前にしたお兄ちゃんの語り」というが、ルビがなく子供に読ませる意図はないらしい。【G1000】既読

読了日:6月2日 著者:ルイスキャロル

 

 

アリスの原文は難しいものと思いこんでいたのですが、今回初めて読んだところとても読みやすかったです。話をよく覚えているせいでもありますが、言葉遊びになっているところも意外とよくわかりました。アリスの口調がとても丁寧になっている場面や、逆に遠慮なく口出しする様子もよくわかり楽しかったです。

読了日:6月5日 著者:LewisCarroll

 

 

kindle無料版。(挿絵がないのが寂しい)。王様の使者の二人が、アングロサクソン風のウサギとお茶を持った帽子屋ですが、ウサギの方は Haigha(Mayorと同じ韻の発音)で、帽子屋の方はHattaという名前。『不思議の国』のMarch Hare、the Hatterとは、似ていて微妙に違うものになっていることを知りました。原文で読むと、アリスがしつけられたように、ていねいに話しているところとぞんざいに話しているところの違いがよく分かり、訳本によってそのメリハリがあるものないものがあるように思います。

読了日:6月12日 著者:LewisCarroll

 

不思議の国のアリス (角川文庫)

不思議の国のアリス (角川文庫)

 

新潮文庫矢川澄子訳と読み比べです。角川文庫の河合祥一郎さん。この方は言葉遊びが大好きなんですね~。日本語訳でも言葉遊びの楽しさを、という意図がというより意欲がもりもりなようで感心しますが、押韻を踏んだ部分に、いちいち傍点をつけてあるのは、ちょっと読みづらい感があります。昔から自分が読んでいたものはこれでもなかった……と、ちょっと探してみると、角川文庫の旧訳で、岩崎民平さんの訳でした。 

読了日:6月15日 著者:ルイス・キャロル

 

鏡の国のアリス (角川文庫)

鏡の国のアリス (角川文庫)

 

鏡の国のアリス』が読書会の課題でした。昔からの大ファンは残念なことに私だけ。「この本は赤塚不二夫だ!と思いました」とおっしゃった方がいて、赤塚不二夫はそんなに読んでないのですが、その方の読み方が一番正しいと思いました。ナンセンスを楽しむのが一番です。子どもの本ですから難しいと思う必要はなく、チェスもアリス自身は直線に進んでいるだけですから知識もいりません。好きな人だけが余計な深読みをいくらでもできる……そんなところが魅力でしょうか。

読了日:6月15日 著者:ルイス・キャロル

 

 

MOE (モエ) 2014年 03月号 [雑誌]

MOE (モエ) 2014年 03月号 [雑誌]

 

このアリス特集号を見せると、みな酒井駒子さんの表紙にぐっときてしまうようだ。みんな大好き酒井駒子さん。彼女のアリス本を読んでみたいものだ。特集では、舞台になった場所、登場人物の紹介など、割と毒のない内容だ。

読了日:6月15日 

 

1865年に出版されてから去年で150年。アリスの物語になぜ人々はこうも惹かれてきたのかを垣間見るため、拾い読みです。文字遊びに数学的興味を見出す人。大きくなったり小さくなったり、ゆっくり落下するとこに物理学的考察を加える人。バルテュスナボコフを引き合いに出す人。創造力の想像力の源になってきたことは間違いない。

読了日:6月16日 著者:高山宏,巽孝之,柴田元幸,四方田犬彦,建石修志,ヒグチユウコ,佐々木マキ

 

 

新潮文庫版『不思議の国のアリス』の挿絵を描いた金子國義について、もっと知りたくて拾い読みです。本には使われなかったアリスの絵がかなりあって、ちょっとエロチシズムを加えたものも見られる。澁澤龍彦の「美少女についての10の質問」がおもしろい。同好の志とでも言うか……。

読了日:6月16日 著者:四谷シモン,佐野史郎,高橋睦朗

 

 

以上、アリス関連本でした。6月は、数は少ないですが、アリス以外もなかなかいい作品が読めた……と思います。

 

マクベス (新潮文庫)

マクベス (新潮文庫)

 

ファスベンダー×コティヤールの映画マクベスが観たくて予習です。短いなーと思ったら、展開が早くて、セリフの中にも重要なことが書かれているので注意しながら読みました。武運の誉れ高い武将が、三人の魔女の狡猾な予言ににまんまと嵌められてしまう。夫以上に舞い上がった夫人の心が弱く折れてしまう。楽しみです。スコットランドですが、この時代はまだキルトがなかったんですね(;´∀`) 評判の高い黒澤明蜘蛛巣城は、後から観ようと思います。

読了日:6月6日 著者:シェイクスピア

 

 

女だけの町―クランフォード (岩波文庫 赤 266-1)

女だけの町―クランフォード (岩波文庫 赤 266-1)

 

ビクトリア時代の田舎町クランフォードを舞台に、そこに住む淑女たち……家柄や身分にこだわり、古いしきたりを守って社交生活を送る、老嬢や未亡人たちの日常を綴る。時代に取り残されたようなこの田舎町では、他所ではありえない奇跡のような無償の善意や信頼が日常のように行われる。まるで、大人版のパレアナを読んでいるようだ。こんな田舎の生活がイギリス人の理想の一つなのだろう、BBCで3度、TVドラマ化されている人気作品だ。

主人公のミス・マティーを、ジュディ・デンチが演じたシリーズを観たが、ギャスケルの他の作品も盛られて立派なドラマになっていた。ドラマに比べて、小説は出来事も登場人物も地味なのだが、味わい深く、とても楽しく読みました。初出はディケンズが編集長をしていた Household Wordsという雑誌に連載され、1853年に小説の形に整えられて出版されたそうだ。エリザベス・ギャスケルはG1000リストに4作品も入っています。【ガーディアン6月イベント】74/1000冊目

読了日:6月23日 著者:ギャスケル

 

 

つまをめとらば

つまをめとらば

 

2015年下半期直木賞受賞作。時代小説の短編集だ。武士の生活の、お城勤め以外の部分が多く描かれて、俳諧漢詩、算学、戯作などの副業(と言っていいかどうか……)が詳しく書かれているところがおもしろかった。主人公は生真面目な武士であることが多く、登場する女性たちは強く、たくましく、色気があって容赦ない。この辺りやはり男性の作家の書き方だなと思う。文章がうまくて柔らかくて親しみやすい。

読了日:6月29日 著者:青山文平

 

芥川賞の2冊と直木賞、図書館に予約してこれが一番に、『死んでいない者』が二番に来ました。でも、本の古び方から言って『つまをめとらば』を借りた人は良く読んでいると思います。

 

直木賞の青山文平さんだが、朝日新聞のこの記事が目に留まりました。

digital.asahi.com

朝日デジタルは、私は会員なのですが、そうでないと全文が読めないし、記事の掲載期間が過ぎました、とか引用しにくいのです。読みづらくてごめんなさい。それで、気になった部分を引用します。

私はこれまで一貫して、一般的にはあまり注目を浴びない18世紀後半~19世紀前半を小説の舞台にしています。直木賞に選んでいただいた『つまをめとらば』も例外ではありません。(青山さん)

これを読んで、「ん?この時代を舞台にした小説って少ない……の?」と思いました。

私は、翻訳家の金原瑞人さんが「年を取ると藤沢周平なんか読みたくなる」と言っているのを聞いて、それなら今のうちに、翻訳ものをせっせと読むようにしよう、と思っているのです。私の母もとても読書家で、アガサ・クリスティの大ファンだったのですが、最近は江戸時代を舞台にした小説しか読まなくなりました。そして「年金が入る偶数月の15日になると、時代小説の文庫の新刊がどっさりでるのよ」と言うのです。(これは、母が言うだけで未確認情報です)。

時代小説でも、細かく分類されると、青山さんの時代は注目を浴びないとこなのかしら?普段ほとんど読まないものでよくわかりません。

 

ピーターラビットシリーズ、1冊しか読めなかった~(涙)

Tale Of The Pie And The Patty Pan,The (BP 1-23)

Tale Of The Pie And The Patty Pan,The (BP 1-23)

 

ねこのリビーといぬのダッチェスが、「パーティに招待」「パーティにお呼ばれ」と張り切って気取っている様子が、ビクトリア朝風でかわいい。子供のままごと用の贅沢なティーセットみたいなお話だ。ギャスケルの『女だけの町』を読んだばかりなので、ギャスケルの方が時代は古いのだが似た雰囲気を感じる。Publisher's noteには、これまでの本とはとは違い、大判のサイズ、細部まで描き込まれた挿絵、長い文章で作られたとある。

読了日:6月30日 著者:BeatrixPotter

 

 

パイがふたつあったおはなし (ピーターラビットの絵本 19)

パイがふたつあったおはなし (ピーターラビットの絵本 19)

 

好きなお話です。お茶の招待をするねこのリビー。招待された犬のダッチェスは、ねずみのパイが食べたくなくて奮闘する。ささやかな社交生活もなかなかの苦労だ。ねこがかわいく服を着ているのに対して、犬のダッチェスがそのままなのは、黒くてつやつやの毛皮のせいかしら?それともポターのねこ愛?お店をやっているねこのいとこのタビタ(タビサ)はお客としては格下らしい。「gammon?」「spinach?」くらいしかしゃべれない、カササギ先生(医者)の身分はもっと微妙だ。彼の言葉は悪態として翻訳されている。

読了日:6月30日 著者:ビアトリクス・ポター

読書メーター