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rocorinne bookworm

INPUTして、OUTPUT。

童話屋『折々のうた 春化秋冬』刊行記念講演会 谷川俊太郎さん、工藤直子さん。詩人たちのお話を聞きました。

長年、朝日新聞一面の一角を飾ってきた「折々のうた」。その編者、大岡信(おおおかまこと)さんと谷川俊太郎さんのこの記事を読んで、二人の長い友情に密かに涙しておりました。(朝日デジタルのリンクを張っていたのですが、記事が公開終了になってしまいました。

朝日新聞 2015年6月19日付・文化面
 「大岡信さんの詩、友情の選集」

こんな話だったよ!って記事も書きました。 

rocorinne.hatenablog.com

 

 

それで、銀座の教文館で『折々のうた』刊行記念講演会があり、谷川俊太郎さん、工藤直子さんの大好きな詩人のお二人に、岩波書店編集者山田馨さんのお話が聞けるというチャンスがあったので、先日行ってきました。

 

新しく刊行されたのはこの2冊。折々のうた春夏秋冬で、春版と夏版 

折々のうた 春夏秋冬・春

折々のうた 春夏秋冬・春

 

  

折々のうた 春夏秋冬・夏

折々のうた 春夏秋冬・夏

 

 これは、文庫本のサイズでありながら、単行本のしっかりした作り。そして見開きの右側に詩が書かれ、左側に解説が書かれていて、開いた好きなところから一つだけでも、好きなだけでも読める、とてもいい本だと思います。私も欲しくなって講演後ナルニア国で求めてしまいましたが、季節のお土産~みたいにプレゼントにもいいと思います。

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上にあるのは、大岡信さん直筆署名(プリント)に篆刻を押したもので、ナルニア国で購入されるとつけてくれます。枚数限定だそうです。  達筆の表装は安野光雅さんです。

 

会場には、他にも童話屋の田中和雄さん、折々のうた最後の7年間の担当者だった、元朝日新聞記者の中村謙さんもお見えになって、終始笑いの起こる、和やかな雰囲気でした。

 

私は折角日曜日に銀座に行くのだし、留守番させるのもかわいそう?と思い、息子Aの分も申し込んで連れて行ったので、後ろの方に座っていると、アンケート用紙が配られました。中に15の和歌、俳句、詩の一部が書かれていて、好きなもの3つを選んで下さい、というものでした。

 

1.郭公(ほととぎす)なくや五月(さつき)のあやめ草

  あやめも知らぬ恋もするかな

2.プラタナス夜もみどりの夏は来ぬ

3.暁や生まれて蝉のうすみどり

4.全長のさだまりて蛇すすむなり

5.金亀子(こがねむし)擲(なげう)つ闇の深さかな

6.六月を綺麗な風のふくことよ

7.空青し山青し海青し

  日はかがやかに

  南国の五月晴こそゆたかなれ

8.谺(こだま)して山ほととぎすほしいまゝ

9.かぜとなりたや  

  はつなつのかぜとなりたや

10.草にねころんでいると

  眼下には天が深い

 

  風

  雲

  太陽

  有名なもの達の住んでゐる世界

11.ふと思うことありて蟻ひき返す

12.川の瀬に立つ一つ石乗り越ゆと水たのしげに乗り越えやまぬ

13.閑かさや岩にしみ入る蝉の声

14.ひっぱれる糸まっすぐや甲虫(かぶとむし)

15.蟻の道雲の峰よりつゞきけん

 

(童話屋さんの許可を得て、転載させていただきました)

 

この15句を眺めているだけでも、初夏っていい季節だな~と、キラキラした気持ちになります。

 

私は、

2.プラタナス夜もみどりの夏は来ぬ

5.金亀子(こがねむし)擲(なげう)つ闇の深さかな

11.ふと思うことありて蟻ひき返す

の3つを選びました。

 

 

折々のうた」連載開始時は1,2年くらいのつもりだったものが、人気が出て一面に掲載となり、休載の期間も含めて29年続き、「現代の萬葉集」と言われるけれど、萬葉集以上の6,000句ほどの集大成になったそうです。

 

連載開始時、1970年当時の大岡さんの写真が写り、谷川さんの写真も。お二人ともなかなかのイケメンです。

 

(以下、メモを取りながらうろ覚えのところもあり、違っているところもあるかも、ご容赦ください)

 

谷川さん「日本だったからできる連載だね、詩が短いから」

折々のうたは、和歌や俳句はそのまま、詩は2,3行の抜粋で掲載されました。

 

工藤さん「自分は実は大岡さんにお会いしていない。折々のうたのためだけに朝日新聞を買っていました」「これまで、詩、俳句、和歌を一緒に載せたものはなかった。読んでいると、どこにでも連れて行ってくれるもの」

 

工藤さん「 夏編の後書きにも書いたが、『全長のさだまりて蛇すすむなり』この句に心をつかまれた」

この句については、谷川さんは良さがわからないと。工藤さんは、田舎に住んでいたらヘビなんて見かけるけど,全身がまっすぐみられるときなんてないのよ!すごいことよ、と力説。谷川さんは、俳句になってるからおもしろくないと言い、いや、おもしろいわよ、と工藤さん。

そして、感想は読み手のものだから、違ってていいんだよね。と言うお二人でした。

 

俳句をめぐって、谷川さん、句会に出てましたね、などとつっこまれ、

工藤さんの句「かなかなや 半音下げて 鳴きおわり」

蜩がかなかな……って鳴いていて、終わりに半音下がる感じですよ、と解説。

谷川さんは、自分の句は覚えてない、と言いながらご披露してくれたのが

「きぶくれて ジャコメッティを 語りけり」ジャコメッティなんか入れちゃって、インテリな感じを出そうっていうね……と、谷川さん。ジャコメッティは、よく知らないけどこんな彫刻を作る人ですね。

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すると、工藤さんが「きぶくれた わたしを あつかいかねている」という句がありますね。これを、どう解釈しますか?というと、みなさんが、「女が着膨れているので脱がすのが大変だ」といいます。工藤さんは、私はそう思うけど男の人でもそう思うのね。知識が身に付きすぎた自分を持て余している、というふうにみる方もいるのでは、とお話なさいました。……恥ずかしながら、私は、本当にそのまま、ダウンジャケットに帽子にマフラーに手袋で、大荷物持って、暑い電車に乗った自分を想像していました(;´・ω・)

 

大岡さんの話に戻って、折々のうたは、解説が短いところがいい。大岡さんは、文章は饒舌。お話なさっても口も達者で、おもしろい。知識があって話しているととても楽しいお相手だそうです。知識がありながら、それにとらわれず、自分の感性でお話なさるところが魅力だったようです。

折々のうたの解説も、解説したりするのでなく、その作品の時代、場所など、その状況へ読者を連れていくのがうまい。きらりときらめく言葉を放つ……というお話でした。

 

 

さて、アンケートの結果です。会場の人気を集めたのは、以下の通り。

そして、谷川さん、工藤さん、山田さんの選んだ3句も、ご覧ください。

1.ふと思うことありて蟻ひき返す 53票 山田

2.暁や生まれて蝉のうすみどり 29票 山田

3.かぜとなりたや  

  はつなつのかぜとなりたや 27票

4.六月を綺麗な風のふくことよ 25票

5.草にねころんでいると

  眼下には天が深い

 

  風

  雲

  太陽

  有名なもの達の住んでゐる世界 谷川

6.プラタナス夜もみどりの夏は来ぬ 谷川

7.谺(こだま)して山ほととぎすほしいまゝ

8.川の瀬に立つ一つ石乗り越ゆと水たのしげに乗り越えやまぬ 工藤

9.閑かさや岩にしみ入る蝉の声

10.郭公(ほととぎす)なくや五月(さつき)のあやめ草

  あやめも知らぬ恋もするかな

11.金亀子(こがねむし)擲(なげう)つ闇の深さかな 工藤

12.空青し山青し海青し

  日はかがやかに

  南国の五月晴こそゆたかなれ

13.全長のさだまりて蛇すすむなり 工藤

14.蟻の道雲の峰よりつゞきけん 谷川 山田

15.ひっぱれる糸まっすぐや甲虫(かぶとむし)

 こんな風に、好きなうたは人それぞれ。自分の好きなものが好きでいいんだよ~、というお話でした。

 

 

この15の詩たち、作者名は講演会中あまり話題に出なかったのですが、すべて『夏版』に収録のものだったので、ご参考までに作者名を書き添えました。

 

1.郭公(ほととぎす)なくや五月(さつき)のあやめ草

  あやめも知らぬ恋もするかな

 (古今集よみ人しらず)

2.プラタナス夜もみどりの夏は来ぬ (石田波郷

3.暁や生まれて蝉のうすみどり (篠田悌二郎)

4.全長のさだまりて蛇すすむなり (山口誓子

5.金亀子(こがねむし)擲(なげう)つ闇の深さかな (高浜虚子

6.六月を綺麗な風のふくことよ (正岡子規

7.空青し山青し海青し

  日はかがやかに

  南国の五月晴こそゆたかなれ (佐藤春夫

8.谺(こだま)して山ほととぎすほしいまゝ (杉田久女)

9.かぜとなりたや  

  はつなつのかぜとなりたや (川上澄生

10.草にねころんでいると

  眼下には天が深い

 

  風

  雲

  太陽

  有名なもの達の住んでゐる世界 (山之口獏

11.ふと思うことありて蟻ひき返す (橋閒石)

12.川の瀬に立つ一つ石乗り越ゆと水たのしげに乗り越えやまぬ (窪田空穂)

13.閑かさや岩にしみ入る蝉の声 (松尾芭蕉

14.ひっぱれる糸まっすぐや甲虫(かぶとむし) (高野素十)

15.蟻の道雲の峰よりつゞきけん (小林一茶) 

 

この詩のリストを掲載していいかどうか教文館さんにお伺いしたところ、童話屋さんに転送してくださり、童話屋さんから許可をいただきました。ところが、急にたくさん仕事が入ってしまい、記事にするのが遅くなってしまいました。

……もっとがんばりましょう。