rocorinne bookworm

この映画観たよ。

1月に読んだ本のまとめ 2016年

今月の1冊は、始めて読んだジュンパ・ラヒリに。

インド系アメリカ人、と簡単には言えないこの方。イギリス生まれ、アメリカ育ちで、アメリカで高い教育を受けている人。故郷のカルカッタはインド領だけど、1971年にパキスタンから独立したバングラデシュの、語源となる「ベンガル人」という言葉があるが、両親はカルカッタ出身のベンガル人、と紹介されている。

 

そして、とても美しい人だ。ジュンパ・ラヒリさま。このデビュー短編集で、ピューリッツァ―賞文学賞他多数受賞。

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 新潮クレストブックスの表紙がスパイスづくしでとっても素敵なのだが、文庫本も出ています。

停電の夜に (新潮クレスト・ブックス)

停電の夜に (新潮クレスト・ブックス)

 

心に残るいい短編集でした。「ピルザダさんが食事に来たころ」アメリカの大学に勤務するインド人の家族の家にダッカ出身の同僚が故郷の東パキスタンの動乱の様子をテレビで見せてもらいに来る。故郷に残した妻と娘たちを心配し苦悩するピルザダさん。しかしアメリカの小学校に通う娘の周囲では、パキスタンのことなど思い出されもしないのだ。インドは日本などより更に、故郷とのつながり、生活習慣や食事を大事にしている印象だが、同郷の嫁のインドっぽい装いを嫌がる話と、アメリカナイズされてるのを嫌がる話と両方あり。最後に「三度目で最後の大陸」の話があって、力強さと誇りと希望が描かれているのがいい。タイトルに使われた二編もとてもよかったです。『停電の夜に』とはロマンチックな邦題だ。短編「停電の夜に」の原題は「臨時の措置」(Temporary Matter)で、本全体の原題は「病気の通訳」(Interpreter of Maladies)だ。

読了日:1月29日 著者:ジュンパラヒリ

 

 

その他に、新進気鋭の児童文学作家、いとうみくさんの本もたくさん読みました。

愛人(ラマン)もよかったです。

2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:4200ページ
ナイス数:1591ナイス

 

 

 

木皿食堂

木皿食堂

 

脚本家、木皿泉のドラマ「すいか」(2003)を強く勧められてDVDで観た。放映時は視聴率が取れなかったものの根強いファンを得ていまだによく観られているそうだ。木皿泉は、夫婦二人のペンネーム。夫はインプット、妻はアウトプット役だという。神戸新聞連載コラム、インタビュー、漫画家羽海野チカとの対談では創作者の生みの苦しみで意気投合!解説・書評に、シナリオ講座の内容まで盛りだくさんな内容で、熱烈なファンを持つこだわりの脚本家の仕事の様子がよくわかった。「野ブタ。をプロデュース」「Q10」も観たくなりました。

読了日:1月2日 著者:木皿泉

 

 

本場の人気バル直伝! ピンチョスレシピ

本場の人気バル直伝! ピンチョスレシピ

 

お正月の前菜に加えてみよう……と思って見た本だが、レシピ本であるだけでなく、ピンチョス発祥の地、スペイン、サン・セバスチャンのバルの楽しみ方ガイドにもなっていて、行ってみた~い感がもりもりわいてくる。ピンチョスは、串に刺したものだけでなく、パンに乗せたものや巻いたものなども含まれて、空腹時に見ると苦しくなるくらいおいしそう(^^♪

読了日:1月5日 著者:海豪うるる

 

 

日本人と日本文化―対談 (中公文庫)

日本人と日本文化―対談 (中公文庫)

 

司馬遼太郎は情熱的に、ドナルド・キーンは穏やかに、奈良時代~江戸時代の日本文化・日本文学を語りあう。博識をベースにした二人の話が凡人の私にも楽しいのは、二人とも稀代の語り手であるからだ。司馬「私は、子規の俳句とか短歌とかはあまり上手でないと思うのですけれども、しかし、散文はじつにいい」キーン「まったく同感です」と合うところもあれば、足利義政儒教の影響、江戸時代の評価については議論を戦わせる。実に楽しそうだ。対談が設定されたときにそれぞれが相手に感じた恐れと、会ってからの楽しさをはしがきとあとがきで語る。

読了日:1月5日 著者:司馬遼太郎,ドナルドキーン

 

 

ロボット・カミイ (福音館創作童話シリーズ)

ロボット・カミイ (福音館創作童話シリーズ)

 

ダンボールで作られたロボット・カミイは、幼稚園で、自分勝手に振る舞って嫌われたり、感心されたり。他の子どもとは違うカミイにちょっとホロリとしてしまう。

読了日:1月5日 著者:古田足日

 

 

卍 (新潮文庫)

卍 (新潮文庫)

 

大阪の裕福な育ちの夫人の語り口調で書かれた本。この大阪弁を書くために、谷崎はネイティブスピーカーを二人雇ったらしいが、谷崎信者の河野多恵子さんはそれでも不満があるらしく、冒頭部分ならこのようにした方がいい、と自分で直したものを出している。関西圏に住んだことのない私には、比べてもどっちがよいとはわからなかったけど。女性の同性愛を扱う本ながら、年少の美女が次第に邪悪さを増して女王様になっていく様子はまさに谷崎!一度は断ち切れても、魅力に負けて奴隷になってしまうところが快感なのね。

読了日:1月6日 著者:谷崎潤一郎

 

 

芸術新潮 2015年 12 月号 [雑誌]

芸術新潮 2015年 12 月号 [雑誌]

 

谷崎特集。写真がいっぱいでおもしろかった。毛筆の達筆で書かれた『細雪』冒頭の原稿。谷崎の愛した女性たちの写真。一番話題にならない2番目の奥さん古川丁未子が一番の美人だ(……顔だけではだめなのね) 。細雪の家「倚松庵」、非公開ながら大切に保存されている夢の浮橋などの舞台「潺湲亭(せんかんてい)」他の住居跡の写真。高輪プリンスのプールサイドで、シンクロで伸びた足を眺める高齢の谷崎……。趣味は一貫しているなと思うのでした。

読了日:1月6日 

 

 

ものぐさで、料理もそれほど好きじゃない、と言う著者は、小さな家だから片付けやすいのかと錯覚してしまうほどすっきり暮らしている。私の年始の目標はいつも片付け関係なのだが(涙)、ちょっと方法を模索中です。片付けのために、収納を増やさない、と決めたものの、この本を読んだ後は無印をうろうろしていそうです(汗)。

読了日:1月7日 著者:本多さおり

 

 

糸子の体重計

糸子の体重計

 

食べるのが大好きで元気な糸子が、夏休み中に9キロのダイエットをすることになった。糸子、クラスの女王様の前田良子、もっと太ってる高峯さん、良子の取り巻き坂巻さん、の4人の女の子と、糸子と仲良しの滝島くんの5人がそれぞれ一人称の章を持つ。後藤竜二さんの「12歳たちの伝説」シリーズと同じ作りだが、糸子の明るさが全編を通じて物語を楽しくしている。読後感のよいお話だ。2013年日本児童文学者協会新人賞受賞。期待の作家だ。

読了日:1月9日 著者:いとうみく

 

 

かあちゃん取扱説明書 (単行本図書)

かあちゃん取扱説明書 (単行本図書)

 

母ちゃんはいばりんぼ。イチというと二にも三にもしてかえしてくる。母ちゃんは褒めると機嫌がよくなる。そうだ!母ちゃんのトリセツを作ろう!と考える小4のぼく。コーヒーメーカーの取説を元に、基本機能、使用方法と書いていくと、今まで気に留めていなかったお母さんの一日の様子が子供にも見えてくる。これはいいな!乗り越えたい困難にトリセツ。何にでも応用できそうです。

読了日:1月10日 著者:いとうみく

 

 

3びきのこぶた ~建築家のばあい~

3びきのこぶた ~建築家のばあい~

 

ミッドタウンのフランク・ゲーリー展に置いてあったこの絵本。3びきのこぶたの家は、スクラップ、ガラス、石とコンクリートからつくられていて、つくったのはそれぞれ、フランク・ゲーリーフィリップ・ジョンソンフランク・ロイド・ライトだ。一昨年オープンしたルイ・ヴィトン財団美術館の話題も新しい、フランク・ゲーリーの家はスクラップでできていると。うん、確かにそんな風に見えますね。

読了日:1月11日 著者:スティーブン・グアルナッチャ

 

 

5年2組横山雷太、児童会長に立候補します! (ホップステップキッズ!)

5年2組横山雷太、児童会長に立候補します! (ホップステップキッズ!)

 

雷太は友達3人と学校で「なんでも屋」をやっている。6年生の進藤君の依頼は「児童会長」に立候補することだった。それまで唯一の候補者だった牧野君は成績・運動神経・ルックスに恵まれた優等生だ。進藤君の意図は?選挙活動を始めた雷太たちがみつけたことは?とてもおもしろかったし、子供が読んでも誰かに共感できると思う。

読了日:1月11日 著者:いとうみく

 

 

お坊さんが教えるこころが整う掃除の本

お坊さんが教えるこころが整う掃除の本

 

お坊さんの生活は、『ファンシィダンス』で垣間見て以来(*_*; 彼らもよくお掃除していたな、そういえば……。雲水は一日8時間以上掃除しているそうだ。実用書として、またはモチベーションをあげようと思って読み始めたが、お坊さんのお掃除は私にはレベルが高すぎる。が、読み物としてはとてもおもしろかった。

読了日:1月11日 著者:松本圭介

 

 

忘れられた巨人

忘れられた巨人

 

最初はRPGのようで、自分は誰だか何をしたらいいかわからないところで目覚め、隣の村へ行く、戦士が道連れになった!みたいな感じだな〜と思いながら読んだが、クライマックスも淡々と進み、読後は茫々とした寂寞感が残った。一度読んだくらいでは分からない話だと思う。記憶は自然と薄れるものだが、登場人物たちは記憶を奪われ、それを取り戻す経験をする。記憶が曖昧な状態で抱いたイメージを一つ一つ拾い直したら、理解が増すのだと思うが……。

読了日:1月15日 著者:カズオイシグロ

 

 

車夫 (Sunnyside Books)

車夫 (Sunnyside Books)

 

読後、人力車に乗ってみたくなること請け合いだ。17歳の車夫、走くんを中心に、7つの章、6人の語り手が登場する。語り手のうち4人が大人で、YAの本としては珍しい。が、大人でも苦しいことがあったり、心が弱かったりすることをすんなり受け入れられると思う。『力車屋』の設定、メンバーが魅力的で、続編が読みたい。

読了日:1月16日 著者:いとうみく

 

 

空へ (Sunnyside Books)

空へ (Sunnyside Books)

 

父親の急逝で、母と妹を守って生きていこうと決心する陽介。自分は中学に、妹は小学校に新入学する年のことだ。フルタイムで働き始めた母の代わりに、まだ幼い妹の面倒をみようと気負う。連作短編集になっていて、陽介の周囲の問題を抱えた同級生たちの事情も暗くて、ちょっと重たい本だ。最後の「神輿」は、父の残した木札を下げて神輿を担ぐ陽介と祭囃子がさわやかで、救われる。 

読了日:1月17日 著者:いとうみく

 

 

スノードーム

スノードーム

 

スノードームを見ると、降って雪を舞わせてみたくなる。若い科学者のデスクに置いてあるスノードームに手を伸ばすと、青年は血相を変えて阻止した。そして姿を消す青年。彼が残した小説には、愛し方も愛され方も知らない、醜い異形の芸術家の驚くべき話が記されていた。アレックス・シアラーは4作目だが、こんなに暗く切ない話は初めてだ。

読了日:1月22日 著者:アレックスシアラー

 

 

愛人(ラマン) (河出文庫)

愛人(ラマン) (河出文庫)

 

ナボコフが、ジュースキントが、谷崎が追い求めた、美少女にして早熟で淫乱な性欲の持ち主という少女の、その少女自身の述懐を読むようで、とてもとてもおもしろかったです。15歳の時のことを70歳で書いているわけですから、時代と場所を超えて浮かぶイメージがたくさん挿話されて、失われたものへの悲しみがいろんな場面で繰り返し降り積もるように描かれる。そのいきなり何の話?みたいな物語のフラフラ感もとてもよかったです。(……ああ、文章力のない私……)

読了日:1月24日 著者:マルグリットデュラス

 

 

神さま、わたしマーガレットです

神さま、わたしマーガレットです

 

マーガレットは6年生11歳。転校先で友達とうまくやれるか、早く胸が大きくなってほしい、男の子を好きになりたい、早く生理になりたいと一般的な悩みを持つ女の子で、いつも「神さま」にお願いを語りかけている。しかし彼女の両親はユダヤ教とクリスチャンで駆け落ちして結婚したので、彼女は無宗教、大きくなったら自分で選んだらいいと言われている。しかし、祖父母たちは宗教のことで、両親はそれぞれの祖父母のことでけんかしてばかり。いろんな教会へ行ってみては、自分の「神さま」を探すマーガレットだが……。 

『ヤング・アダルトUSA』で紹介されていたこの本、1970年に書かれ、作者はYA小説女の子版の先駆者のような人だという。 マーガレットが割と平凡なところがちょっとつまらないのだが、一神教を信じる人々の揺るぎない自信が対立するところは怖い。

マーガレット「宗教を決める実験は、あまりたのしくありませんでした。……宗教は、人がそんなふうにきめるものではないように思われます。……わたしが将来子どもをもつとしたら、子どもが小さいときに、どの宗教に属するかはっきりおしえてやります。そうすれば、はじめからその宗教についてまなぶことができるからです。十二歳では、まなぶのにおそすぎます」

読了日:1月26日 著者:ジュディ=ブルーム

 

 

まろい

まろい

 

「まろい」という言葉は「まる」をあたたかく表す。とても優しい詩で、まるが自身を省みたり、世の中を見ているうちに、「とつぜん/大地がゆれて/まるの夢はふきとんだ」「まるのうちがわから/太古の力がわきおこる」「まるは/天を押し上げ/地を押し下げ/大地のゆれに/立ち向かう」優しい詩の中に平和への強い祈りと決意が感じられました。イラストは、お孫さんの山口そらさんです。

読了日:1月29日 著者:山口節子,山口そら

 

 

最悪のはじまり (世にも不幸なできごと 1)

最悪のはじまり (世にも不幸なできごと 1)

 

「ハッピーエンドの物語の方がお好みの読者諸兄には、ほかの本を読むことをおすすめしたい」と始まる本書、真に受けて、子どもがどんどん不幸になる話なんて嫌だなと手に取らずにいたが、子どもが逆境にあって、知恵と勇気で乗り越える話であって、それほど悲惨なことも起こらず、まず王道な児童文学と言える。(少なくともこの1巻は)今度アメリカでTVドラマ化され、大好きな俳優のニール・パトリック・ハリスが演じるオラフ伯爵がどんな役なのか知りたくて読んでみた。オラフ伯爵はシリーズ通しての一番の悪者ですね。なるほど~。

読了日:1月29日 著者:レモニースニケット

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